欧州放射線リスク委員会の勧告
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/06 16:50 UTC 版)
「低線量被曝問題」の記事における「欧州放射線リスク委員会の勧告」の解説
欧州緑の党が設立した民間団体欧州放射線リスク委員会 (ECRR) は2003年勧告の中で、セラフィールド再処理施設の小児白血病の発生率がICRPの基準からの予測値より100倍以上多いと報告している。その上でホットパーティクル仮説(1974 年、タンプリンとコクランによって主張された、放射性物質の微粒子による局所被曝の危険性は全身被曝より高いとする仮説。ICRPは支持していない。)を採用するならば、現在のLNT仮説は内部被曝や低線量の被曝を過小評価しているため、放射線防護基準はICRPの基準より少なくとも10倍厳しくするべきだと主張している。また同委員会は、国連発表による1945年以降から1989年までの人口に対する被曝線量から、放射線被曝によるガン死亡者数を約6160万人と算出しており、他方、ICRP基準では約117万人となると試算している。 ホットパーティクル仮説がICRP等に採用されない理由は、理論的には、微粒子内部で発生したα線やβ線(特にα線)の一部が微粒子外に出る前に吸収されてしまう現象(自己吸収)による放射線量の減少、および、微粒子近くの細胞が致死線量を超える放射線にさらされること(over kill)により総線量の一部が死滅した細胞内で消費されて生きた細胞に与える障害が減ることである。これらは放射性物質が微粒子状分布でなく均等分布をしている方が生きた障害細胞を多く残しやすいことを意味しており、ホットパーティクル仮説を支持しない。また動物実験データや、放射線障害の知見の少なかった時代に作られたX線造影剤トロトラスト(二酸化トリウムを含むコロイド製剤)を血管内投与された人々などの発癌等のデータは投与放射能量から計算される内部被曝線量で予想される程度かさらに低い発症率を示しているため、ICRP等はホットパーティクル仮説を採用していない。 なお、セラフィールドの小児白血病の過剰発生を説明する説には、火災事故以外の放射性物質のずさんな排出管理による過剰被曝、セラフィールドの労働者だった父親の被曝、同定されていないウイルスの感染などがあり、原因は明確ではない。
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