標本に求められるもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 23:49 UTC 版)
「標本 (分類学)」の記事における「標本に求められるもの」の解説
分類学的な目的で作られる標本は、その生物を代表するものであるべきである。伝統的には形態的特徴が重視されてきたため、それが十分に表現されるものが求められた。 昆虫採集のように小型の生物であれば、一個体を丸々採集するのは簡単である。大きくても、脊椎動物のように個体性が明確なものは、それを採集する。個体による変異もあるから、できれば複数個体の確保が望ましい。 植物のように個体性が明確でないものは、一部だけを採集するのが珍しくない。特に、樹木のように大きいものは、すべてを取り切ることはまずできない。そのような場合、もっとも特徴が出ている部分を切り取る。一般に種子植物の構造は枝に葉が並び、その間に花や実がつくのを単位として、全体にそれらが繰り返された構造をもつので、それらの特徴を含む構造を切り取る。具体的には複数の葉をつけ、花や実のついた枝をもって標本とするのを理想とする。株立ちになったり、匍匐枝を伸ばすような草本の場合も同様に考える。例外的に、シダ植物門の場合には葉一枚を標本とする事が多い。動物でも群体性のもの、例えばサンゴのようなものは、群体全体を取るか、植物と同様に考え、その一部を採集する。また、一個体から、例えば枝と花と樹皮、という風にあちこちの部分を切り取って、これらをまとめて一つの標本と見なす、というやり方もある。 基本的には成熟した成体を採集するものであるが、生活環のそれぞれの段階も必要に応じて採集する場合もある。いずれにせよ、生殖器官はその生物の重要な特徴である場合が多いから、それを含む標本を作ることが必要であることが多い。 なお、標本はその生物の本来の形態を保存するものでなければならない。標本作成の処理によって妙な構造ができたりするのは避けなければならない。逆に、作成の操作によって生じる特徴が役に立つ場合もある。例えば、高等植物は、普通は乾燥して標本とするが、その際に黒変したり、特殊な色を生じるものがあり、これもその種の特徴として認められる。ただし、特殊な乾燥機を用いるなど、手順が異なると様子が変わることもある。
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