検定と推定の関係
統計的仮説検定と区間推定はともに,ある母数を持つ母集団から標本を抽出し,その標本から得られる統計量を対象とするという類似点を持つ。
区間推定では,統計量の分布を元に,特定の標本統計量の値がある確率の下で起こり得る母数の存在する区間を求める。
これに対して,仮説検定では,母数に関するある特定の仮定(帰無仮説)を設定し,その下で,ある特定の統計量が得られる確率を求める。 もし,得られた確率がある基準(有意水準)より小さければ,母数に関する仮定が誤っている可能性が強いと判断すればよい。
つまり,両者は推論の方向が逆の関係にあると言ってよい。
例:
- あるテレビ番組を見たかどうか 300 人に聞いたところ, 30 人が見たと答えた。視聴率調査会社の全国集計結果では視聴率は 6% であったといっている。調査した 300 人の集団は‘平均的'と言えるだろうか。
- 標本サイズは n = 300,標本比率は
= 0.1 である。
- 標本比率の分布は,母平均
,母分散
( 1 -
)の正規分布に近似できる。
- 観察された標本比率 0.06 の標準化得点を求める。
となる。
- 計算された Z より大きい値が得られる確率は正規分布表から Pr{|Z|> 2.91 }= 0.0018 であることがわかる。
- もし,調査した集団が‘平均的'であれば,こんなことはほとんど起こらない(500 回に 1 回くらいは起こるが)。
- しかし,実際に起こったのだから,調査した集団は‘平均的ではない'すなわち,この集団は特別にこの番組に興味があったのかもしれない。
- 標本サイズは n = 300,標本比率は
- 貨幣を 10 回投げたところ,表が 1 回しか出なかった。‘この貨幣は表が出にくいのではないか'という仮説を検証したい。
- 「貨幣の表が出る確率は 0.5 である」という仮説をたてる。
- この仮説の下では,10 回の試行中,表の出る確率は,表 1 のようになる。
表 1.貨幣を投げる実験 表の出る回数 確率 累積確率 0 0.001 0.001 1 0.010 0.011 2 0.044 0.055 3 0.117 0.172 4 0.205 0.377 5 0.246 0.623 6 0.205 0.828 7 0.117 0.945 8 0.044 0.989 9 0.010 0.999 10 0.001 1.000
- この仮説に基づいた場合は,表が 1 回以下しか出ない確率は 0.011 であることがわかった。
- しかるに,実際の実験では 1 回しか出なかった。
- この事実は以下の 2 通りの解釈ができる。
- 統計的仮説検定は b の立場をとるのである。
- 「貨幣の表が出る確率は 0.5 である」という仮説をたてる。
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