根端
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 06:58 UTC 版)
根はふつう細長い軸状の構造であり、先端成長する。根の先端部分は根端 (root apex) とよばれる。根端の中には根端分裂組織 (root apical meristem, RAM) とよばれる分裂組織が存在し、活発な細胞分裂を行っている (右図1a)。茎のシュート頂分裂組織とは異なり、根端分裂組織の先端側は根冠 (root cap) とよばれる多細胞層の柔組織によって覆われている (右図1a)。根端分裂組織は先端側に根冠を、基部側に新たな根の組織を作り出して成長していく。 根は土壌中を伸びていくため、先端表面にある根冠の細胞は次第にはがれ落ちていくが (ふつう1個の根冠細胞の寿命は1〜9日ほど)、根端分裂組織によって内側から順次新たな根冠細胞が供給され、根冠には一定量の細胞が維持されている (右図1a)。根冠の細胞はムシゲル (粘質ゲル、mucigel) を分泌し、根端を保護すると共に根を伸長しやすくする。根はふつう正の重力屈性 (屈地性; 下方へ伸びる性質) を示すが、根冠中央基部付近の細胞 (平衡細胞) 内でアミロプラスト (光合成能を欠き、デンプン粒を多く含む色素体) が沈降することが重力方向の感知に関わっていると考えられている。 根端分裂組織からは基部側へも新たな細胞が付加され、これが拡大伸長し、それに伴い組織分化していくことで根が伸長していく。根端分裂組織から基部側へつくられた組織は、外側から前表皮 (protoderm)、基本分裂組織 (ground meristem)、前形成層 (procambium) とよばれ、これがそれぞれ表皮、皮層、中心柱へと分化する。構成する細胞の状態に応じて、根は先端側から大まかに (重なりながら) 分裂帯 (細胞分裂帯)、伸長帯、成熟帯 (分化帯) に分けられる。根端分裂組織を含む部分が分裂帯であり、細胞数が増加していく。ふつう根端から数 mm のところが伸長帯であり、細胞が拡大伸長している。根の伸長はこの部分で最も活発であり、細胞はときに10倍以上に伸長する。細胞はこの部分で分化し始め、やがて成熟帯において細胞分化が完了する。
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