染色原理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/17 05:15 UTC 版)
これまでグラム染色性の違いは、細菌の細胞壁の構造によると考えられてきた。グラム陽性菌の細胞壁が、一層の厚いペプチドグリカン層から構成されているのに対し、グラム陰性菌では、何層かの薄いペプチドグリカン層の外側を、外膜と呼ばれる、リポ多糖(リポポリサッカライド LPS)を含んだ脂質二重膜が覆う形となっている。このため、アルコールなどで処理すると、グラム陰性菌の外膜は容易に壊れ、また内部のペプチドグリカン層が薄いために、細胞質内部の不溶化した色素が容易に漏出して脱色される。グラム陽性菌ではこの漏出が少なく、脱色されないまま色素が残る。 2015年にMichael J. Wilhelmらは、染色に用いられるクリスタルバイオレットは細胞質内部まで浸透出来ず、大部分がペプチドグリカン層にトラップされると説明している。グラム陽性菌ではペプチドグリカン層が厚いため色素の漏出が少ないが、グラム陰性菌はペプチドグリカン層が薄く、エタノール洗浄で容易に色素が漏出、脱色しうる。これは長い間考えられてきたグラム染色の原理に一石を投じるものであり、注目に値する。 なお、元から細胞壁を持たないマイコプラズマやファイトプラズマはグラム陰性である。また、抗酸菌はグラム不定性を示すが、これは抗酸菌の細胞壁にミコール酸と呼ばれるロウ性の脂質が多く含まれているため、水溶性色素の浸透が悪いためである。また、芽胞を作る菌では、芽胞の部分は染色されず透明に見える。
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