日本における「明白かつ現在の危険」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/06 09:59 UTC 版)
「明白かつ現在の危険」の記事における「日本における「明白かつ現在の危険」」の解説
アメリカ憲法判例理論の影響を強く受ける日本では、下級審判決で「明白かつ現在の危険」の基準を用いるものも見られた。 (1)公職選挙法の戸別訪問禁止規定(138条1項)について、その合憲性が問われた事件で、「明白かつ現在の危険」の基準について言及される。 東京地裁判決昭和42年3月27日判時493号72頁 戸別訪問により買収等の「重大な害悪を生ぜしめる明白にして現在の危険があると認めうるときに限り、初めて合憲的に適用しうるに過ぎない」と判示した。 妙寺簡裁判決昭和43年3月12日判時512号76頁 戸別訪問それ自体には「言論の自由を制限しうるために必要な危険の『明白性』の要件が欠けており」、公職選挙法138条の規定は、「明白かつ現在の危険の存在しない場合も含めて、何らの規定も付さずすべての戸別訪問を禁止しているものであることは明らかであるから、場合を分けて適用を異にする余地はなく、規定自体憲法21条1項に違反し、無効といわなければならない」と判示した。 最三判決昭和42年11月21日刑集21巻9号1245頁 公職選挙法138条1項は、買収等の「害悪の生ずる明白にして現在の危険があると認められるもののみを禁止しているのではない」として、戸別訪問禁止規定に「明白かつ現在の危険」の基準の適用を否定した。 (2)公共施設の利用について、不許可処分の合憲性が問われた事件で、「明白かつ現在の危険」の基準が考慮されている。 泉佐野市民会館事件では、「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される」として不許可処分とした事例を最高裁が適法としている(平成7年3月7日)。 上尾市福祉会館事件では、「主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想信条に反対する者らがこれを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことができるのは、…警察の警備等によってもなお混乱を防止することができないなど特別な事情がある場合に限られる」として、不許可処分を違法と判示した(平成8年3月15日)。
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