日の出山瓦窯跡とは? わかりやすく解説

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日の出山瓦窯跡

名称: 日の出山瓦窯跡
ふりがな ひのでやまかわらがまあと
種別 史跡
種別2:
都道府県 宮城県
市区町村 加美郡色麻町
管理団体 色麻町(昭51・4・16)
指定年月日 1976.03.31(昭和51.03.31)
指定基準 史6
特別指定年月日
追加指定年月日
解説文: S50-12-029[[日]ひ]の[[出山瓦窯]でやまがよう]跡.txt: 奈良時代陸奥国経営し開拓を北に進めるため、多賀城扇の要として諸城柵や寺院宮城県北方造営されている。これらの諸遺跡調査は、遺瓦により進められた所が大であるが、今までのところ、奈良時代前半期造営伴って使用された瓦の窯跡は、多賀城周辺にはなく、北方大崎平野周辺丘陵部にしか発見されていない木戸瓦窯跡大吉山瓦窯跡、日の出山瓦窯跡がそれである。これらの瓦窯跡からは重弁蓮花軒丸瓦、重弧文軒平瓦重弁蓮花文棟端飾板や丸・平瓦が検出されているが、この瓦の笵型は各瓦窯跡で非常に近似してはいるが別々の笵型を用いていることがわかっている。
 日の出山瓦窯跡は大崎平野の南辺にあり、5地点瓦窯知られているが今回そのうちのA地点指定するのである。この地点では、窯は丘陵の南斜面に7基存在し、6基は瓦を焼成しているが1基だけは須恵器を主に焼成している。窯は地下式の無段窖窯である。各窯はいずれ地山掘り下げて前庭部設け地山に窯体を掘り抜いたもので、素掘り焚口平坦な燃焼室傾斜のゆるい焼成室があり、奥に垂直に立ち上る煙道をもつ。窯の全長は5メートル強、幅・高さともに1メートル内外計る焚口から前庭部下方排水溝設けているものが多い。本瓦焼成の瓦は、南方25キロメートル多賀城跡多賀城廃寺跡、西北約8キロメートル菜切谷廃寺跡等から出土している。
 木戸瓦窯跡大崎平野北辺にあり、地下式の窖窯が7基確認されている。本瓦焼成の瓦は南方40キロメートル多賀城跡多賀城廃寺跡から発見されている。
 大吉山瓦窯跡大崎平野西北部にあり、地下式の窖窯3基の存在認められている。
 以上の地区瓦窯構造など共通した点がみられ、陸奥国における初期瓦窯形成し多賀城跡寺院跡などの造営期の瓦を焼成したのである当時城柵寺院造営進展並びに当時窯業生産あり方解明する上で基準となる重要な遺跡である。

日の出山瓦窯跡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/09 06:39 UTC 版)

座標: 北緯38度30分53秒 東経140度48分12秒 / 北緯38.51472度 東経140.80333度 / 38.51472; 140.80333

日の出山
瓦窯跡
位置

日の出山瓦窯跡(ひのでやまかわらがまあと)は、宮城県加美郡色麻町にある奈良時代の遺跡。1976年3月31日に国の史跡に指定された。

位置

陸奥国国府鎮守府が置かれた多賀城の創建瓦を製作した瓦窯の跡である。大崎平野の南部を流れる鳴瀬川の南岸、通称日の出山という標高76.4メートルの丘陵に位置する。多賀城と密接に関連し、東北の古代史を解明するうえで重要な遺跡である。瓦の供給先であった多賀城は、直線距離で南南東に25キロ離れている[1][2]

瓦の供給先

日の出山瓦窯の瓦は、多賀城のほか、多賀城廃寺、色麻町の一の関遺跡、加美町城生柵・菜切谷廃寺・東山官衙遺跡大崎市の名生館官衙遺跡・伏見廃寺などにも供給されていた[3]。なお、多賀城の瓦は他に木戸瓦窯大吉山瓦窯(ともに大崎市)でも焼成されていた[4][5]

本瓦窯では軒丸瓦、軒平瓦、丸瓦、平瓦が生産されている。このうち軒丸瓦と軒平瓦の文様が創建期多賀城使用瓦と同型式であることが早くから注目されていた。軒丸瓦は八弁重弁蓮花文で、面径18センチ。中房の蓮子は中央に1、周囲に4ある。面径の小さいことと、中房が凹むことが特色である。軒平瓦はヘラ描きで二重弧文を表し、顎部には鋸歯文を表す[6]

多賀城の変遷は以下のように4期に区分される。このうち、II期以降の瓦は多賀城近くで生産されているのに対し、I期の瓦は日の出山を含む大崎平野の瓦窯で製作されていた[7]

  • I期 - 神亀元年(724年)大野東人による創建
  • II期 - 天平宝字6年(762年)藤原朝狩による大修理
  • III期 - 宝亀11年(780年)伊治呰麻呂の焼打からの復興
  • IV期 - 貞観11年(869年)貞観地震からの復興

窯跡(A地点)

日の出山で創建期多賀城に使用されているのと同じ型の瓦が出土することは古くから知られ、すでに1954年には内藤政恒が「多賀城古瓦草創年代考」という論考を発表している。1969年、土地所有者が開墾のためにブルドーザーを入れて掘削したところ、大量の瓦が出土したため、工事を中止し、宮城県教育委員会が緊急に調査を行ったものである[8]

遺跡の範囲は東西1.5キロ、南北1キロに及び、窯跡は6地点に存在することがわかっている(A地点 - F地点と称す)。このうちA地点とC地点については発掘調査が実施され。F地点については磁器探査と試掘が行われている。他の3地点については開墾により原型を損なっているとみられ、本格的調査は実施されていない。上述の1969年に調査が行われたのはA地点で、国の史跡に指定されたのはA地点のみである[3]

A地点は遺跡の東側で、丘陵の南西斜面に7基の地下式窖窯(あながま)が築かれている。うち北西端が1号窯で、以下、3号から8号までの番号が付されている(2号は欠番)。なお、調査時点で2号窯とされていたものは、凹地に黒色土と瓦片が堆積したもので、窯跡ではないことがわかった[9]

各窯は積石などの工作をせずに地山を素掘りして焚口、燃焼室、焼成室、煙道を造ったものである。燃焼室は平坦で、焼成室は緩斜面となるが、両者の間には明確な段差を設けず、焼成室内にも階段はない。8号窯のみ規模が小さいが、他の6基は、全長が5メートル強、幅が1メートル内外の規模である。1号窯と4号窯は前庭部に排水溝を設ける。3号窯は窯としての役目を終えた後、貯蔵場所として使用され、内部に平瓦が貯蔵されていた。8号窯は全長2.6メートルと小さく、この窯のみ、もっぱら須恵器を焼成していた(他の6基は瓦を主として一部須恵器も焼成)[10]

窯跡(C・F地点)

A地点以外で調査済みの窯跡の概要は以下のとおりである。

C地点は遺跡の中央部西寄りの丘陵南麓に位置し、窯跡7、竪穴式建物跡14が確認されている。窯跡は1基が半地下式であるほかは地下式である[11]

F地点は遺跡の中央部南寄りに位置する。東斜面に4、西斜面に3の窯跡があり、すべて地下式である。また西斜面には竪穴式建物跡5が確認されている。C・F地点で確認された竪穴式建物跡は、工房等の瓦製造関連施設とみられる[12]

脚注

  1. ^ 宮城県教育委員会 1970, p. 1.
  2. ^ 宮城県多賀城跡調査研究所 2011, p. 序.
  3. ^ a b 宮城県多賀城跡調査研究所 2011, p. 2.
  4. ^ 指定文化財(史跡)木戸瓦窯跡”. 宮城県. 2021年2月17日閲覧。
  5. ^ 指定文化財(史跡)大吉山瓦窯跡”. 宮城県. 2021年2月17日閲覧。
  6. ^ 宮城県教育委員会 1970, p. 10,11.
  7. ^ 多賀城跡”. 宮城県多賀城跡調査研究所. 2021年2月17日閲覧。
  8. ^ 宮城県教育委員会 1970, p. 2.
  9. ^ 宮城県教育委員会 1970, p. 4.
  10. ^ 宮城県教育委員会 1970, p. 4,5,7,9,10.
  11. ^ 宮城県多賀城跡調査研究所 2011, p. 54.
  12. ^ 宮城県多賀城跡調査研究所 2011, p. 2,54.

参考文献

  • 宮城県教育委員会 『宮城県文化財調査報告書22:日の出山窯跡群』宮城県教育委員会、1970年。 
    全国遺跡報告総覧(奈良文化財研究所サイト)からダウンロード可。
  • 宮城県多賀城跡調査研究所 『多賀城関連遺跡発掘調査報告書36:日の出山窯跡群III』宮城県教育委員会、2011年。 
    全国遺跡報告総覧(奈良文化財研究所サイト)からダウンロード可。


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