損益通算
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 14:38 UTC 版)
損益通算とは、ある種類の所得に生じたマイナスの金額(損失)を他の種類の所得に生じたプラスの金額(利益)から控除する手続(69条)。分類所得税的要素(所得分類など)を持つ日本の所得税の総合所得税的側面。順所得課税の原則(純額主義)・担税力に応じた課税の原則(担税力原則)からの要請。分離課税の方法が採られている退職所得・山林所得にも損益通算が行われる。 不動産・事業・山林・譲渡の所得に損失が生じた場合、他の所得の金額から控除できる(69条1項)。利子・退職所得は所得税法上損失が生じることは無い(マイナス金利の利子所得は0円として扱う)。配当・給与・一時・雑所得の損失は他の所得の金額から控除することはできない。また、損失を控除できる4種の所得も、控除できない場合の例外規定が色々と存在する。注意点として、これは損失(赤字)の話であり、所得(黒字)の方は別のルールである。配当・給与・一時・雑所得の所得(黒字)を他の損失(赤字)で引ける。 所得税では損失をどの所得で控除するかはが法定されている。 第1次通算 まず、総所得金額に算入される所得(利子・配当・不動産・事業・給与・譲渡・一時・雑)は、経常所得(利子・配当・不動産・事業・給与・雑)と一時的な所得(譲渡・一時)に分け、各グループ内で損益通算を行う。 第2次通算 その後、控除しきれない損失がある場合は、総合所得金額に算入される所得全体の金額から控除する。 第3次通算 それでもなお控除しきれない場合は、山林所得→退職所得の順番で控除する。総所得金額に算入される所得の損益通算後、山林所得から生じた損失は、経常所得→一時的な所得→退職所得の順に控除する。 長期譲渡所得・一時所得の金額は、損益通算後の残額の合計額の2分の1相当金額だけが総合所得金額に算入される(二分の一控除=二分の一課税)。損益通算後の残高には繰越控除が行われる。 例外規定として、以下の物などは損益通算できない。 生活に通常必要でない資産 生活に通常必要でない資産に係る所得の計算上生じた損失は原則損益通算できない。やむを得ない事由で生じた損失は、損失を生じた年分かその翌年分に譲渡所得の金額を限度として控除される。 タックス・シェルター規制 損益通算は所得税の課税を免れるための無駄な投資や損失の彼此流用の誘因となる。それを防ぐため、土地取得に要した負債の利子(租税特別措置法41条の4第1項)や、組合契約(受益者等課税信託)の特定組合員(特定受益者)が組合事業(信託)から生じる不動産所得上の損失を損失として認めない措置が取られている。 分離課税の対象所得 株式等に係る譲渡所得等、先物取引に係る雑所得等は他の所得と損益通算できない。近年は損益通算を認めない分離課税が拡大傾向にある。
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