採用されたデザイン案
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 16:31 UTC 版)
「テラー・ウラム型」の記事における「採用されたデザイン案」の解説
兵器のデザインとして、いくつかの異なった案が採用された。 タンパー、または容器のどちらか一方に、最終段階の核分裂反応用としてウラン238を使用する案。 いくつかの細かい案の中から、プライマリーからの過剰な中性子を押さえる構造を追加する案。 容器の内側をX線を反射する特別な機構にする案。X線の反射材は、光を反射する鏡のようなものとは異なり、反射材がX線により高温になって自身からX線を発し、これをセカンダリーに伝える動作をする。 爆弾のデザインとしては、大きく分けて2つのタイプが存在する。1つは重水素を液化冷却して使用するもので、アイビー作戦マイク実験で使用されたタイプ(いわゆる湿式水爆)。もう1つは最新のW88核弾頭に代表されるもので、回転楕円体型(卵型、もしくはスイカ型)のプライマリーと、球体のセカンダリーを持つMIRV用の小型のタイプである(いわゆる乾式水爆。現在のものはほとんどがこちらである)。またほとんどの水爆はターシャリー部を持たないが、核出力25メガトンのB41型核爆弾は大出力であり、アメリカ合衆国の核兵器では唯一ターシャリーを持つものであった。またソ連も、史上最大級の核出力50メガトンを誇るツァーリ・ボンバで、多段階式の水爆を採用した(実際の実験は、2段階構造の水爆で行った)。もし実際の水爆がテラー・ウラム型を基にした他の方式を採用していたとすると、それは一般には知られていない方式で、以下で述べる“スロイカ”方式等が考えられる。 重要な点は、テラー・ウラム型では2つの点でプライマリーの核分裂反応に依存していることである。1点目は、通常の(化学的)爆発が核分裂性の核を圧縮し、結果として起こる核分裂反応の威力は、化学的爆発に比べて遙かに大きい点である。2点目は、プライマリーの核分裂反応で放出される放射線はセカンダリーの圧縮と起爆に使用され、結果として起こる核融合反応の核出力は単独の核分裂反応と比べて遙かに大きいという点である。この圧縮の連鎖は、任意の数のセカンダリーへと続き、最終的に天然ウラン製タンパーの核分裂反応に至る(ただし、この最終の核分裂反応にはセカンダリーの核融合反応で放射される中性子束が不可欠である)。この様なデザインでは任意に核出力の向上を図ることが出来るので、最終的には“ドゥームスデイ・デバイス(皆殺し装置)”のレベルにまで上げられる可能性を持っているが、通常の水爆はほとんどが核出力12メガトン以下である。この理由は、実存する最大の標的を破壊するためでも12メガトン以下で十分であると考えられているためである。
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