指数安定性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/20 05:10 UTC 版)
半群 T の成長上限は、定数 ω 0 = lim t ↓ 0 1 t log ‖ T ( t ) ‖ {\displaystyle \omega _{0}=\lim _{t\downarrow 0}{\frac {1}{t}}\log \|T(t)\|} によって定義される。この数は ‖ T ( t ) ‖ ≤ M e ω t {\displaystyle \|T(t)\|\leq Me^{\omega t}} がすべての t ≥ 0 に対して成立する定数 M (≥ 1) が存在するような実数 ω の下限として与えられることから、そのような呼ばれ方をしている。 次に述べる条件はすべて同値である: すべての t ≥ 0 に対して ‖ T ( t ) ‖ ≤ M e − ω t {\displaystyle \|T(t)\|\leq M{\rm {e}}^{-\omega t}} が成立するような M,ω>0 が存在する。 成長上限 ω0 < 0 は負である。 その半群は一様作用素位相においてゼロに収束する。すなわち、 lim t → ∞ ‖ T ( t ) ‖ = 0 {\displaystyle \lim _{t\to \infty }\|T(t)\|=0} となる。 ‖ T ( t 0 ) ‖ < 1 {\displaystyle \|T(t_{0})\|<1} であるようなある t0 > 0 が存在する。 T(t1) のスペクトル半径が厳密に 1 より小さくなるような t1 > 0 が存在する。 すべての x∈X に対して ∫ 0 ∞ ‖ T ( t ) x ‖ p d t < ∞ {\displaystyle \int _{0}^{\infty }\|T(t)x\|^{p}\,dt<\infty } となるような p ∈ [1, ∞) が存在する。 すべての p ∈ [1, ∞) および x ∈ X に対して、 ∫ 0 ∞ ‖ T ( t ) x ‖ p d t < ∞ {\displaystyle \int _{0}^{\infty }\|T(t)x\|^{p}\,dt<\infty } が成立する。 これらの同値な条件を満たす半群は、指数安定あるいは一様安定であると言われる(関連文献においては、上の初めの三つの条件のうちのいずれかが定義として扱われることが多い)。Lp の条件が指数安定性と同値であることは、ダツコ-ペジーの定理として知られる。 X がヒルベルト空間である場合には、生成素のレゾルベント作用素に関する、次のような別の条件もまた半群の指数安定性と同値となる: 正の実部を持つすべての複素数 λ は A のレゾルベント集合に属し、そのレゾルベント作用素は右半平面において一様有界となる。すなわち、(λI − A)−1 はハーディ空間 H ∞ ( C + ; L ( X ) ) {\displaystyle H^{\infty }(\mathbb {C} _{+};L(X))} に属する。これはギアハート-プルスの定理と呼ばれる。 作用素 A のスペクトル上限は、定数 s ( A ) := sup { R e λ : λ ∈ σ ( A ) } {\displaystyle s(A):=\sup\{{\rm {Re}}\lambda :\lambda \in \sigma (A)\}} として定義される。ただし、A のスペクトル σ ( A ) {\displaystyle \sigma (A)} が空である場合には、s(A) = −∞ とする。 半群の成長上限とスペクトル上限には、s(A)≤ω0(T) という関係がある。s(A) < ω0(T) となるような例もいくつかの文献で見られる。もし s(A) = ω0(T) であるなら、T はスペクトル決定成長条件(spectral determined growth condition)を満たしているといわれる。終局的にノルム連続な半群は、スペクトル決定成長条件を満たしている。このことから、それらの半群の指数安定性と同値な条件がまた得られる: 終局的にノルム連続な半群が指数安定であるための必要十分条件は、s(A) < 0 である。 終局的にコンパクトな半群、終局的に微分可能な半群、解析半群、および一様連続半群は、終局的にノルム連続であるため、スペクトル決定成長条件を満たしている。
※この「指数安定性」の解説は、「C0半群」の解説の一部です。
「指数安定性」を含む「C0半群」の記事については、「C0半群」の概要を参照ください。
- 指数安定性のページへのリンク