恋と愛の違い、恋と愛の意味の違い
西欧では恋と愛の区別は明瞭ではなく、たとえば英語では恋も愛も基本的に love と表現されれる。宗教思想上の概念を援用して「恋はエロース(Eros)であり愛はアガペー(Agape)である」などのように区別されることはある。
「恋」「愛」の違い
「恋」には「思い焦がれる」という意味合いが強く含まれる。対象を得たい(交際したい、一緒に居たい、伴侶として結ばれたい)という切実な気持ちと、その対象が眼前になく、しかも思いが届かないという苦悩や悲嘆のニュアンスを含む。「愛」には「慈しむ」「大切にしたいと思う」という意味合いが強く含まれる。男女の情愛に限らず、家族、隣人、全くの他人、あるいは「郷里」や「書画」のような抽象的な対象にも愛を注ぐことができる。その意味で「愛」は「恋」よりも広汎で包括的な概念といえる。
「恋」とは
日本語における「恋(こひ)」は、万葉集などにも使用例が多く見つかる、かなり古い大和言葉である。
万葉集(第1巻67番)には「不所聞有世者 孤悲而死萬思(聞こえずありせば恋ひて死なまし)」という表現が見いだされる。「こひ」には「孤悲」という万葉仮名が充てられており、悲壮なニュアンスが見いだされていたことが推察される。
白川静の古語辞典「字訓」では、「こひ」は「こふ(戀ふ)」の名詞形であるとし、「こふ」は「媚ぶ」と同源の語であろう、と述べられている。(「乞う」や「請う」のような語との関連については特に言及されていない)
「愛」とは
「愛」は古くは「めづ」の語で用いられた。竹取物語や源氏物語などに使用例が見られる。「めでたし」「めづらし」と関連する語彙であると指摘されている。愛は仏教においては、「渇愛」「愛執」「愛着」「愛別離苦」などの語に見られるように、我欲であり、貪る心であり、すなわち煩悩である。生の苦悩を生む「十二因縁」のひとつに数えられる。
恋と愛の俗説
「恋と愛の違い」を述べる、よくある俗説。このうち「恋は下心」という解釈は、漢字の構成(部首)を理解するにあたって語弊を招く。漢字の部首における「下心」は、「恭」や「慕」の字に見られる「⺗」である。これを無視して上っ面の字形と「助平心」を結びつける解釈には感心しない。
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