徳島・淡路父子放火殺人事件とは？わかりやすく解説

徳島・淡路父子放火殺人事件
正式名称	徳島・兵庫2県にわたる強盗殺人・放火・死体遺棄事件
場所	日本徳島県徳島市吉野本町の県営住宅（男性殺害現場）; 兵庫県津名郡五色町（現・洲本市）の別荘造成地（男性の長男殺害・発見現場）;
標的	県営住宅に住む男性（当時66歳）; 男性の長男（当時38歳）;
日付	2001年（平成13年）4月20日・4月21日
概要	男がパチンコ仲間の男性と長男を殺害し、預金通帳と印鑑を奪って逃走した。
懸賞金	300万円
攻撃手段	首を絞める・鈍器で殴打・放火
攻撃側人数	1人
武器	鈍器
死亡者	2人
損害	預金通帳4冊（総額4000万円）
犯人	父子のパチンコ仲間の男（当時40歳）
容疑	強盗殺人・殺人・現住建造物等放火
動機	不明
対処	被疑者死亡のため書類送検
管轄	徳島県警察（捜査一課・徳島東警察署）; 岡山県警察; 徳島地方検察庁;
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徳島・淡路父子放火殺人事件（とくしま・あわじおやこほうかさつじんじけん）とは、2001年（平成13年）4月20日から同年4月21日に徳島県徳島市、兵庫県淡路島で発生した殺人事件。

2012年（平成24年）10月に岡山県岡山市で被疑者の男が病死していたことが判明し、逮捕には至らなかった^[3]。

事件の概要

2001年4月20日未明、徳島県徳島市吉野本町の県営住宅の一室で火災が発生^[1]。現場の焼け跡から無職の男性（当時66歳）の遺体が発見された^[1]。翌日4月21日深夜、兵庫県津名郡五色町（現・洲本市）の別荘造成地で火災が発生^[5]。焼け跡から男性と同居していた長男（当時38歳）が遺体で発見された^[1]。

2人の死因は火災によるものではなかった^[1]。遺体は鈍器で頭を殴られ、首を絞められたことが判明^[1]。男性の自宅からは預金通帳4冊（総額4000万円）と印鑑がなくなっていた^[4]。約1ヶ月後、徳島県警察による捜査の結果、父子の接点のある被疑者の男（当時40歳）が浮上^[4]。しかし男の姿はなかった。男の軽トラックから長男の血痕が発見される。被疑者特定から程なく男は全国に指名手配された^[1]。

2004年以後に作成された指名手配書には従前のものにはない、「おい、◯◯!（◯◯は被疑者の姓）」という文字が配されている^[1]^[3]。これは一般の人の目を引く効果と、これを目にした被疑者に対するプレッシャーを意図したという^{[注 2]}。この「おい、○○!」と記された指名手配書は、被疑者の病死が確認される（後述）までの8年間で108万枚が全国に配布された^[9]。

2004年4月20日及び同年4月21日、被害者父子の死体遺棄・死体損壊容疑の公訴時効が成立し、強盗殺人容疑で継続捜査となった^[10]。2010年 9月9日に警察庁捜査特別報奨金対象事件に指定された^[6]。

被疑者の特徴

被疑者には以下の特徴があった。

1960年8月3日生まれ
身長174センチ位
中肉
北海道出身（本籍は兵庫県洲本市）
上の前歯が4本ない
両手の小指が短く、薬指の第一関節に届かない
箸の持ち方が握り箸
盲腸の手術痕有

被疑者の死亡

2012年 10月20日、岡山県岡山市北区で被疑者の男が病死していたことが確認された^[4]^[2]^[11]。

岡山県警察によると、10月19日午後9時5分頃、岡山市北区の雑居ビル内で男が倒れているところを同居女性が見つけて119番したが、午後10時15分ごろに死亡し、警察が検死を行ったが、この時点ではこの人物が指名手配犯であるとは気づかなかった^[5]。翌10月20日に同居女性が葬儀業者に連絡した際に葬儀業者が偽名ではないかとして警察に相談し、改めて指紋の照合をしたところ指名手配犯であることが判明した^[4]^[12]。同居女性は「2005年頃から偽名とは分かっていたが、殺人事件の指名手配犯とは知らなかった。職には就いていなかった」と説明している^{[注 3]}^[13]^[15]。

司法解剖の結果、男の死因は心タンポナーデであった^[16]。死亡時の男は額の髪の生え際が後退し、頭頂部も薄くなっているなど指名手配書に掲載されていた写真とは別人の如く風貌が変わっていた^{[注 4]}^[18]^[19]^[20]。そのため、近隣住民は男について「短髪で目はつり上がり、ポスターの写真とは全く似ておらず、頬がこけていた」と話すなど男が顔を隠さずに出歩いても指名手配犯だとは全く気付かなかった^{[注 5]}^[18]^[22]。男の病死が確認されるまでに寄せられた男に関する情報は約4400件だった^[14]。

12月5日、徳島県警察は男を被疑者死亡のまま、強盗殺人・殺人・現住建造物等放火容疑で徳島地方検察庁に書類送検、同月12日に被疑者死亡で不起訴処分となった^[7]^[23]。

警察庁捜査特別報奨金

警察庁捜査特別報奨金対象事件で被疑者が逮捕されないままの死亡確認は今回が初めてだった。捜査特別報奨金については、「被疑者死亡で発見され、逮捕など事件の解決につながった情報はない」と判断されるとして、支払われない方針である。

脚注

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注釈

^ 2010年10月31日以降は300万円^[5]。2010年10月30日までは200万円であった^[6]。
^ 一方、1999年（平成11年）に撮影された真正面からの無表情の写真がほとんどだったため、小宮信夫・立正大学文学部社会学科教授は「日常生活で正面からの無表情な顔を見ることはまずない」と指摘している^[8]。
^ 男は岡山市内に逃走した後はしばらくホテル暮らしをしていたが、女性が勤務していた飲食店に客として訪れたことがきっかけで親密な仲となり、女性が住んでいた雑居ビルで同居を始めた^[5]^[13]^[14]。その後、男は定職に就くことはなく、女性の収入を当てにする生活を送っていた^[13]^[14]。
^ 徳島県警察は男の12パターンの顔の合成写真をホームページで公開したが、いずれも実際の男の風貌と全く異なっていた^[17]。また、徳島県警察の捜査幹部は、男の遺体の写真を見て「自分にポスターのイメージしかなければ、日々すれ違っていても分からないだろう」と述べている^[8]。
^ 男がよく訪れていた喫茶店の店主は、会社員を装ってスーツ姿で通い、新聞や雑誌を読みながら過ごしていたと証言している^[21]。

出典

以下の出典において、記事名に指名手配されていた男の実名が使われている場合、この箇所を伏字とする

^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l ^m ⁿ ^o ^p ^q 「◯◯容疑者の行方つかめず　県警､情報提供呼び掛け続行」『徳島新聞』徳島新聞社、2006年4月20日。オリジナルの2006年4月23日時点におけるアーカイブ。2025年5月23日閲覧。
^ ^a ^b 「「おい、◯◯！」指名手配の容疑者、死亡確認　岡山で」『朝日新聞』朝日新聞社、2012年10月20日。オリジナルの2012年10月21日時点におけるアーカイブ。2025年5月23日閲覧。
^ ^a ^b ^c ^d 「殺害事件で手配中の◯◯容疑者、病死か　岡山で見つかる警察、気づかず検視」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2012年10月20日。オリジナルの2012年10月22日時点におけるアーカイブ。2024年9月20日閲覧。
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^ ^a ^b ^c ^d ^e 「死亡の「おい、◯◯」、岡山で女性と同居生活」『読売新聞』読売新聞社、2012年10月20日。オリジナルの2012年10月22日時点におけるアーカイブ。2025年5月23日閲覧。
^ ^a ^b ^c ^d 「徳島の親子殺害、警察庁が懸賞金　情報提供呼びかけ」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2010年9月10日。オリジナルの2025年5月23日時点におけるアーカイブ。2025年5月23日閲覧。
^ ^a ^b ^c 「死亡した◯◯容疑者、殺人容疑で書類送検へ　徳島県警」『朝日新聞』朝日新聞社、2012年12月5日。オリジナルの2012年12月6日時点におけるアーカイブ。2025年5月23日閲覧。
^ ^a ^b 「「おい◯◯」ポスターに功罪　注目浴びたが逮捕できず」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2012年10月29日。オリジナルの2025年5月23日時点におけるアーカイブ。2025年5月23日閲覧。
^ 「「おい、◯◯！」ポスター撤去 8年間で108万枚配布」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2012年10月22日。オリジナルの2012年10月25日時点におけるアーカイブ。2024年9月20日閲覧。
^ “情報提供のお願い”. 徳島県警察. 2025年5月23日閲覧。
^ 「徳島で親子殺害の容疑者岡山で病死か」『NHK NEWS WEB』日本放送協会、2012年10月20日。オリジナルの2012年10月20日時点におけるアーカイブ。2012年10月20日閲覧。
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^ 「◯◯容疑者、スーツで喫茶店通い　岡山に潜伏、11年逃亡の末病死」『山陽新聞』山陽新聞社、2012年10月22日。オリジナルの2012年10月24日時点におけるアーカイブ。2025年5月23日閲覧。
^ 「「おい、◯◯！」余裕の逃亡生活　顔の印象変えて外出も」『朝日新聞』朝日新聞社、2012年10月27日。オリジナルの2012年10月27日時点におけるアーカイブ。2025年5月23日閲覧。
^ 「「おい、◯◯」を書類送検岡山で病死、強盗殺人など容疑」『千葉日報』千葉日報社、2012年12月5日。オリジナルの2018年2月20日時点におけるアーカイブ。2024年9月20日閲覧。

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