御犬養育金
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 01:26 UTC 版)
「犬小屋 (江戸幕府)」の記事における「御犬養育金」の解説
中野の犬小屋の犬を村落に預ける制度は元禄12年ごろから開始したと考えられ、犬を預けられた村落には1か月に1匹当たり銀2匁5分(1年間で金2分)の「御犬養育金」が支給された。給付は毎年春と冬の2度になされ、春の分はその年の10月から翌年3月までの、冬の支給分は翌年4月から9月までの費用に充当するというように、前倒しでの支給だった。支給される犬の養育金が重要な収入源となり、暮らしに欠かせなくなっていた村落もあった。 武蔵国入間郡山口領では、下北野村の三郎兵衛、町谷村の次兵衛、上勝楽寺村の吉兵衛、下勝楽寺村の伊兵衛、上藤沢村の十郎右衛門の5人が中野犬小屋の役人から「御犬御用」の世話役を命じられた。彼らは、この御用にかかる賄金を犬1匹当たり銀2匁4分ずつ養育金の中から受け取っていた(大舘右喜「生類憐愍政策の展開」『所沢市史研究』第三号)。 元禄13年から犬を預かった中藤村では、下記のような細かい誓約をさせられた(『武蔵村山市史』資料編・近世)。 百姓の務めに支障をきたさない 病犬を大切に扱って役所の指示に従う 犬同士が喧嘩をしたらすぐに引き離す 通行中の者や近村の者には預かり犬を粗末にさせない 狼に襲われないように用心する 預かり犬が死んだ場合には毛色・預かり主・死亡時刻を書き付けて報告する 犬が行方不明になったら徹底的に探し発見したら報告する 犬の養育金は確実に養育者各自へ渡す 中野犬小屋役人の犬改めを受ける 養育金受け取りの際は名主や村役人が養育者各自から印鑑を預かって金銭を受け取る 金を受け取った者はすぐに帰村して養育金を銘々に渡す 犬の養育ができなくなった場合には役所に報告する 犬が生まれたら大切にして役所に報告する 預かった犬や来犬などが怪我をした場合は大切に扱う 犬小屋から預かった犬を密かに他村へ預けない しかし、徳川綱吉の死後、犬小屋の廃止が決まり、犬の村預けも停止。「村預け」を担当した関係諸村は、前渡しで支給された「御犬養育金」の返還を命じられた。
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