幻のダービー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 16:54 UTC 版)
それから3週後の5月21日に、ゲイタイムはソールズベリー競馬場で5頭立てのドルイドステークス(10ハロン≒2011メートル)を3馬身差で勝ち、ダービーへ向けてひそかに調子をあげた。サンダーヘッドがフランスで負けたので、5月28日のダービーでは、人気はアガ・カーンのタルヤーに集中した。まだ16歳で、ダービーに出場するのが2度目の若いピゴットが乗るゲイタイムは26倍と人気薄だった。 ソールズベリーでは先行策によって良績を残していたゲイタイムだったが、33頭も出走するダービーでは思ったような位置取りができず、道中は多くの不利を受けることになった。それでもタッテナムコーナーをまわり、最後の直線に入ると、ピゴット騎手はゲイタイムを外に持ち出すことに成功した。人気のタルヤーも直線半ばで先頭に立つ大勢だったが、外から追い込むゲイタイムの前方は開けており、ゴールまで残り1ハロン付近で完全にタルヤーとゲイタイムが抜けだした。先に抜けだして逃げこみをはかるタルヤーに対し、外から追い込むゲイタイムのほうが脚色がよく、ゲイタイムが勝ちそうになった。ところがあと1馬身差まで迫ったところで、先を行っていたタルヤーが疲れて右へ斜行し、ゲイタイムの走路を妨害した。両馬はそのままの体勢で、タルヤーのほうが3/4馬身だけ先にゴールに入った。しかしタルヤーの進路妨害は明らかだった。(実際の動画 - British Pathe The Derby 1952) 2位で入線したピゴット騎手も、タルヤーの進路妨害は重大で、異議を申し立てれば通るだろうと確信していた。レースを目の前で見ていた英国放送協会のピーター・オサリバンも、タルヤーは失格になり、若いダービージョッキーが誕生するのは間違いないとみていた。ところが、異議を申し立てようと焦ったピゴットはゴール直後にゲイタイムを止めようとしてバランスを崩し、落馬してしまった。放馬されたゲイタイムはそのまま走り去り、装鞍したまま、よその厩舎が立ち並ぶエリアまで逃げていってしまった。通りかかった厩務員がゲイタイムを取り押さえたが、まさかダービーに出走した馬がそのまま逃げてきたとは思わなかった。結局、ピゴットがゲイタイムと再会したのはゴールから20分以上も経ったあとで、それから戻って後検量を済ませた頃には1時間が過ぎていた。進路妨害の異議申立てを行うには完全に時機を逸しており、レースは入線順位通り確定した。 ダービー後にエリザベス女王の所有馬となり、ともにタルヤーに優勝をさらわれる形でキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス2着、セントレジャーステークス5着などの成績を収める。セントレジャー出走時にドンカスター競馬場を訪れたエリザベス女王の写真が新聞に掲載されている。4歳時も現役を続行したが、特筆すべき成績は残していない。
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