平成14年台風第6号
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台風第6号(Chataan、ツァターン) | |
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カテゴリー4の スーパー・タイフーン (SSHWS) | |
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衛星画像(7月7日)
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発生期間 | 2002年6月29日0時(UTC)- 7月11日15時(UTC) |
寿命 | 303時間 |
最低気圧 | 930 hPa[1] |
最大風速 (日気象庁解析) |
95 knots |
被害総額 | 353億円 |
平均速度 | 20.4 km/h |
移動距離 | 6,173 km |
上陸地点 | 千葉県館山市付近[2] |
死傷者数 | 死者6人・行方不明者1人・負傷者39人 |
被害地域 | ![]() |
プロジェクト : 気象と気候/災害 |
平成14年台風第6号(へいせい14ねんたいふうだい6ごう、アジア名:Chataan / ツァターン[3])は、2002年7月に日本に上陸して被害を出した台風である[1][2][4]。
概要

2002年6月29日にトラック島近海で台風6号が発生し、アジア名「ツァターン(Chataan)」と命名された。命名国はアメリカで、チャモロ語で「雨」を意味する。その後フィリピン大気地球物理天文局(PAGASA)の管轄領域に入ったため、フィリピン名「グロリア(Gloria)」と命名された。台風は勢力を強めながら北西に進み、7月7日には非常に強い勢力となった[5]。9日に南大東島の東海上で徐々に勢力を弱めながら北東に進路を変え、11日0時過ぎに千葉県館山市付近に上陸[1][6][2][7]。その後鹿島灘から三陸沖を北北東に進み、11日21時頃、北海道釧路市付近に再上陸した[8]。その後はオホーツク海へ進み、12日0時に温帯低気圧に変わった[9][10]。
なお、この台風のアジア名である「ツァターン(Chataan)」は、この台風限りで使用中止となり、次順からは「マットゥモ(Matmo)」というアジア名が使用されることになった。
影響
この間、梅雨前線が本州上に停滞して活動が活発化したため、中部地方から東北地方にかけて大雨が降った[2][4][9]。岐阜県では9日から10日にかけて1時間に90mm以上の猛烈な雨が降り、期間降水量は岐阜県根尾村樽見で510mmに達したほか、関東地方の山沿いの一部でも400mmを超えた[11][12]。また静岡県静岡市で318.5mmとなるなど、東海・関東・東北地方の平野部でも、一部で期間降水量が200mmを超える大雨となった[13][14]。
東京の八丈島で最大風速27.3m/sなど、伊豆諸島や関東沿岸などで20m/sを超える暴風を観測。11日には、北海道尻羽岬で7.09mの有義波高を観測している[9]。
岐阜県の長良川では、川の水が増水して警戒水位を超え、濁流による堤防の崩落が相次いで発生[15][10]。
群馬県と埼玉県では竜巻とみられる突風や土石流などが起きた[2][16]。また福島県では、阿武隈川が危険水位を超え浸水被害が発生し、宮城県でも旧北上川、江合川が溢れて浸水の被害が出た[4]。岩手県では北上川支川の氾濫などにより45の市町村で浸水被害が発生しており[17]、被害が大きかった東山町では10日から11日にかけて大雨が降り、北上川支川の砂鉄川では3時に警戒水位を超え、5時30分頃から氾濫した[18]。7時8分には、長坂・松川の両地区で合計900世帯2,100人に避難勧告が発令された[17]。7時30分に、東山町は災害対策本部を設置して対応した。さらに砂鉄川支川の猿沢川も、11日8時頃から急激に増水して氾濫[18]。そのため県は、東山町に対し災害救助法を適用した[18]。砂鉄川が北上川と合流する地点に位置する川崎村では、7時には災害対策本部を設置し対応に当たった[18]。
村内を東西に流れる千厩川も増水、また北上川も急激に増水し、 諏訪前地点で12日1時に危険水位を大きく上回ったため、浸水被害や土砂災害が各所で起きた。孤立した住民も多く、水防団員が救助用ボートなどで救出作業を行った[17]。
被害
この台風により、死者6人・行方不明者1人・負傷者39人の人的被害が確認されているほか、住家全壊27棟・住家半壊55棟・一部損壊415棟・床上浸水2,453棟・床下浸水8,400棟・耕地被害25,861ha・被害総額353億円などとなっている[19][9]。また北海道大雪山系で天候の悪化により登山者2名が死亡した(トムラウシ山遭難事故 (2002年))[20][21][22]。
脚注
- ^ a b c 『朝日新聞』2002年7月9日 朝刊 2社会30頁「台風6号、九州接近」(朝日新聞東京本社)
- ^ a b c d e 『毎日新聞』2002年7月11日 東京朝刊 1面1頁「台風6号、房総に上陸 群馬と埼玉で竜巻、20棟が被害」(毎日新聞東京本社)
- ^ “デジタル台風:台風200206号 (CHATAAN) - 総合情報(気圧・経路図)”. agora.ex.nii.ac.jp. 2020年4月20日閲覧。
- ^ a b c 『読売新聞』2002年7月11日 全国版 東京夕刊 夕2社18頁「台風6号 関東・東北で増水被害 土砂崩れなど2人死亡、1人不明」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2002年7月8日 全国版 東京夕刊 夕2社14頁「台風6号が北上」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2002年7月9日 全国版 東京夕刊 夕2社14頁「台風6号、11日に関東接近の恐れ」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2002年7月11日 全国版 東京朝刊 一面1頁「台風6号、千葉上陸」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2002年7月12日 北海道 東京朝刊 札社会35頁「台風6号、釧路付近に再上陸 岩手などで4人死亡、4人不明=北海道」(読売新聞北海道支社)
- ^ a b c d “台風第6号、梅雨前線 平成14年(2002年)7月8日~7月12日”. www.data.jma.go.jp. 2020年4月20日閲覧。
- ^ a b 『毎日新聞』2002年7月12日 北海道朝刊 社会面21頁「台風6号、再上陸 北海道を縦断、死者不明8人に--東北など大きな被害」(毎日新聞北海道支社)
- ^ 『読売新聞』2002年7月11日 全国版 中部朝刊 一面1頁「台風6号、岐阜に豪雨、根尾村、1日で507ミリ 新幹線161本が運休」(読売新聞中部支社)
- ^ 『朝日新聞』2002年7月10日 夕刊 1社会9頁「台風6号接近 腰まで水、警戒続く 岐阜、浸水相次ぐ 【名古屋】」(朝日新聞名古屋本社)
- ^ 『読売新聞』2002年7月11日 静岡 東京朝刊 静岡34頁「台風6号接近、交通混乱 JR断続的運転停止 焼津-静岡インター閉鎖=静岡」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2002年7月12日 静岡 東京朝刊 静岡32頁「台風6号 激しい雨、つめ跡 静岡市井川で471ミリ=静岡」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2002年7月10日 全国版 東京夕刊 夕社会19頁「台風6号、東海大雨、4500世帯に避難勧告 新幹線、運休相次ぐ」(読売新聞東京本社)
- ^ 『読売新聞』2002年7月11日 群馬 東京朝刊 群馬西34頁「台風6号 突風が保育園、民家襲う 境で窓割れ、けが人=群馬」(読売新聞東京本社)
- ^ a b c “2002年(平成14年) 台風6号洪水”. 内閣府防災. 2020年4月20日閲覧。
- ^ a b c d 『読売新聞』2002年7月12日 岩手 東京朝刊 岩手30頁「台風6号、つめ跡深く 8人死傷、床上浸水962世帯=岩手」(読売新聞東京本社)
- ^ “デジタル台風:台風200206号 (CHATAAN) - 災害情報”. agora.ex.nii.ac.jp. 2020年4月20日閲覧。
- ^ 『読売新聞』2002年7月13日 全国版 中部朝刊 社会27頁「愛知の4女性登山、1人が下山できず 北海道・大雪山系トムラウシ山」(読売新聞中部支社)
- ^ 『読売新聞』2002年7月13日 全国版 西部夕刊 夕社会11頁「大雪山系で遭難、1人死亡 福岡の女性は重体/北海道」(読売新聞西部本社)
- ^ 『毎日新聞』2002年7月14日 西部朝刊 社会面31頁「北海道・大雪山系で遭難の2女性、死亡を確認」(毎日新聞西部本社)
外部リンク
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