平和的解決の義務化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/06 01:07 UTC 版)
「国際紛争の平和的解決」の記事における「平和的解決の義務化」の解説
かつては国際紛争の解決手段として、外交交渉などの平和的手続(#紛争解決手続き)と武力行使を伴う強力的解決手続きの双方が認められた。1899年に採択された国際紛争平和的処理条約1条では、武力行使を予防して国際紛争の平和的解決の確保に全力を尽くすことが約束されたが、国際紛争の平和的解決義務や武力行使の禁止が定められることはなかった。国際連盟規約においては強力的手段による紛争解決は制限されたが(12条1項)、平和的解決に失敗した場合には最後の手段として戦争に訴えることも認められていた(15条7項)。 しかし1945年の国連憲章では、2条3項で紛争を平和的手段により解決すべき一般的義務が定められたほか、2条4項では武力行使禁止原則が定められている。2条3項、2条4項は以下の通り。 3.すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。 4.すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。 — 国連憲章2条3項、4項日本語訳。 2条3項に定められた紛争の平和的解決義務は、2条4項の武力行使禁止と密接に関連しており、武力の行使や武力による威嚇に至らない手段によって紛争の解決を図ることにより相互に補完し合う関係にある。 1970年の友好関係原則宣言では紛争当事国が紛争の平和的解決を目指すべきとされ、1982年のマニラ宣言も国際紛争は「もっぱら平和的手段によって解決」すべきとした。1986年のニカラグア事件国際司法裁判所判決では、国際紛争の平和的解決義務が武力行使禁止の原則を補完する慣習国際法としても認められることとなった。 このような国際紛争の平和的解決義務は、平和的手段を用いるべき義務であって、平和的手段を用いた結果として実際に国際紛争の解決に至る義務まで紛争当事国に課せられているわけではない。友好関係原則宣言は「速やか」な解決を紛争当事国に求め、ひとつの平和的解決手段によって解決しない場合であっても「引き続き」解決のため努力し続けることを要請している。また、マニラ宣言は「早期」の解決を求めている。このように解決を求める方向性が示されてきたと言えるが、それは解決に至るための努力を求めるにとどまるものである。
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