希薄な防火管理者の当事者意識
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 22:45 UTC 版)
「千日デパート火災」の記事における「希薄な防火管理者の当事者意識」の解説
7階プレイタウンは、消防法令で規定される特定防火対象物のひとつであり、区分は「特定防火対象物・第2項(イ)」にあたる。したがって管理権原者の指導監督の下に防火管理者を選任して防火管理にあたる必要がある。プレイタウンの管理権原者は千土地観光の代表取締役業務部長であり、また防火管理者はプレイタウン支配人が選任されていた。通常であれば支配人に就任(1970年9月)したと同時に防火管理者の任にも就くところであるが、前任者からの引き継ぎに9か月間の空白期間があり、防火管理者の変更届がしばらく出されておらず、実際に選任されたのは1971年(昭和46年)5月だった。防火管理者であるプレイタウン支配人は、店内で火災が発生した場合の防火および消火対策は考えていたが、6階以下の階で火災が発生した場合を想定して客や従業員を地上へ避難させることは全く想定しておらず、そのことは念頭になかった。管理権原者である千土地観光・代表取締役業務部長にしても、万が一に階下で火災が発生した場合を想定し、避難誘導に関して支配人や従業員らを指導監督したことは一度もなかった。 プレイタウン支配人は、消防署が主催する防火管理者資格講習会に出席し、ビル火災の特徴や建物の構造、避難誘導の方法などの知識を学んだはずであった。講習の際に使用したテキストも所有しており、熟読したうえで内容を理解すれば更に防火管理や避難誘導の知識が身に付いたはずである。ところが同支配人は「テキストは内容が難しく、面白くもないので殆ど読まなかった」という。テキストには「ビル火災における煙の流動性とその特徴および危険性、火災時のエレベーター不使用の原則、避難時の方向と姿勢、避難器具使用に関する注意点、群集心理によるパニックの特徴、消防訓練の種類と意味」などについて書かれており、拾い読み程度であっても目を通しておきさえすれば、防火管理や避難誘導の最低限の知識を得て高層ビル7階で営業する風俗店の防火管理者としての自覚を持つことができたはずである。そのうえで避難訓練を実施し、従業員らを指導しておけば本件火災に際して日ごろの訓練の成果を遺憾なく発揮できたはずである。知識を身に付けない懈怠によって実際の火災に際しては、プレイタウン滞在者に対して有効な避難誘導は何も行っておらず、自身は消防隊のはしご車によって「7番目に救助された」とマスコミに報道されるに至っては、防火管理者としての自覚が無かったという批判は免れないところである。
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