実証主義の科学論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 21:08 UTC 版)
いわゆる科学論や科学哲学が成立するのはこうした実証主義の影響においてであり、20世紀前半に「形而上学の除去(elimination of metaphysics)」を掲げ、今日に連なる科学論の基礎を築いたウイーン学団の論理実証主義はその典型であろう。 事実、1960年代前半まで科学哲学の分野での主導権を握っていたウイーン学団の後裔たちは、ナチスの台頭を逃れて亡命したアメリカで、自然科学の方法による社会科学の統合を掲げて活動していたが、その理論的プログラムは、イアン・ハッキング [1981: 2] によれば、ラディカルな「還元主義」である。簡単に言えば、唯一の実在世界に関するただ一つの科学が存在すべきであり、表層の科学はより深層の科学へ還元可能である。社会学は心理学へ、心理学は生物学へ、生物学は化学に、化学は物理学へ還元することができ、さらには、当の物理学すらも、直接的所与を記述する観察文の集合へ還元されることによって「実証」されるのである。こうした論理実証主義のプログラムを見るとわかるように、科学哲学にとって問題なのは、かならずしも実際に活動している科学の姿そのものではない。科学論や科学哲学を成立させた問題設定とは、科学としての科学に関する解明ではない。科学は(科学ではないほかの問題の)モデルとでもいうべき役割を期待されていたのである。
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