宇宙や銀河の歴史と赤外線銀河
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 00:56 UTC 版)
「赤外線銀河」の記事における「宇宙や銀河の歴史と赤外線銀河」の解説
マーフィらの結論によれば、複数の銀河の衝突・一体化が進む課程のなかで、銀河の光度は一定でない。衝突初期の段階と一体化の末期の段階で明るく輝き、超高光度赤外線銀河の光度に達する。しかし、その間の長い期間では比較的光度が低く、赤外線銀河の光度で輝く。一体化の最初の段階では、おそらくディスクの内側部分のガスが銀河の中心に落ち込み、強く輝くのである。銀河中心の活動が盛んになると、外側への圧力が強まり、銀河中心へのガスの供給が止まる。その後、一体化が十分進んだ後、残ったガスの量が十分であるか、または随伴銀河が飲み込まれることで、再度銀河中心へのガスの供給が始まり、超高光度赤外線銀河として輝くことになるのである。 超高光度赤外線銀河は、その後楕円銀河に発達するといわれている。これは、楕円銀河もやはり銀河同士の衝突・一体化によっ形成されたということが考えられているからである。超高光度赤外線銀河と楕円銀河を比較すると、楕円銀河の中でも、中型サイズで回転している(小さな核をもち、扁平な形状のもの)種類の楕円銀河とよく似た特徴を持つ。そのため、超高光度赤外線銀河はこの種類の楕円銀河へ発達していくと考えられる。あるいは超高光度赤外線銀河は、その後クエーサーに発達するとも言われている。超高光度赤外線銀河の中にしばしば見つかるAGNの中には、クエーサーに匹敵するエネルギーを発しているものがある。そのため、例えば内部からの放射の圧力や、超新星風で銀河の周辺のガスやダストが吹き飛ばされると、それがクエーサーとして観察されるのかもしれない、という推定が根拠になっている。しかし、クエーサーと超高光度赤外線銀河を比較すると超高光度赤外線銀河はサイズが小さく、銀河内の物質の速度分布が異なり、超高光度赤外線銀が発達してもクエーサーにはなりそうにはなく、むしろ超高光度赤外線銀河は硬X線銀河や、X線を発する早期型銀河に似た特徴を持っている。 遠方の赤外線銀河を観測することで、昔の宇宙の状態を推し量ることができる。昔の宇宙では星の生成がいまより盛んだったらしい。エルバスらの研究によれば、赤方偏移の量でz ≈ {\displaystyle \approx } 1(約76億年前の宇宙に当たる)あたりでは、銀河からの赤外線放射のうち、波長15μmのところで赤外線銀河・超高光度赤外線銀河の寄与は60%であり、またAGNの寄与は17%程度である。当時は、現在の宇宙において赤外線銀河が発する赤外線の密度の40倍以上の密度で赤外線が発せられており、また、新しい星も100/ M {\displaystyle M} ⊙ {\displaystyle _{\odot }} /年程度の割合で生まれていたらしい。z ≈ {\displaystyle \approx } 2(約100億年前の宇宙)より大きい範囲でも同様に、星生成が盛んに行われていたらしい。
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