孵化直後のオスの殺処分の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/08 15:20 UTC 版)
「ニワトリのヒナの雌雄鑑別」の記事における「孵化直後のオスの殺処分の問題」の解説
採卵用鶏の雌雄鑑別において、卵を産まないオスは殺処分される。 産まれてすぐに殺処分するという慣行は、諸外国では動物愛護の観点から問題視されており、卵が孵化する前に性別鑑別できる方法の開発がすすんでいる。 ドイツでは2018年11月から、協同組合Reweが、孵化前の性別鑑定技術を使用して生産された卵の販売を開始、他のスーパーマーケットもこれに続いた。フランスでは、2020年9月から、フランス最大手スーパーのカルフールが、孵化前の性別鑑定技術を使用して生産された卵の販売を開始した。 アメリカでは米国鶏卵生産者団体(UEP)が、2020年までにオスの雛の殺処分撤廃を目標にすると発表(2016年6月9日)。この目標は達成できなかったが、依然としてUEPはこの問題に取り組むことを目標としている。 2020年1月、フランス政府は、2021年末までにオスの殺処分を廃止すると発表。世界で初めてオスの殺処分禁止を決定した国となった。続いて翌年、2021年1月、ドイツ政府は雄のひよこの大量殺処分を禁じる政令案を閣議決定した。ユリア・クレックナー(Julia Kloeckner)食料・農業相は発表で、雄のひよこの大量殺処分禁止は2022年からだと述べた。 しかしながら、孵化前に性別鑑定すれば、必ずしもオス雛の苦痛が回避できるわけではない。それは、産卵7日目(あるいは6日目)以降で、卵の中の雛は痛みを感じる能力が卵内で発達しはじめるからである。現時点(2021年12月)では、ドイツやフランスで「オスの殺処分を伴わない」として販売されている卵は、卵内性別鑑定が9日目あるいは13日目に行われており、オスの苦痛を回避できていないという問題が依然として残っている。そのため、ドイツでは本件に関する新法において、2024年以降は、胚の性別識別は6日目までしか許可されないものとなっている。しかしながら9日目までに性別を決定する技術はまだ存在していないため、これの技術開発が求められている。なお、この卵内性別鑑定技術の開発過程においては動物実験が行われている。 2021年7月、フランス、ドイツ、オーストリア、アイルランド、ルクセンブルグ、ポルトガル、スペインは、EUで雛の殺処分を禁止するように求めた。代表団は、この慣行は現在のEU法の下で許可されているものの、倫理的に受け入れられないと主張した。同年12月、イタリア政府は、卵産業におけるオスの雛の淘汰の禁止を導入する法改正を承認。2022年に上院で投票後に決定の見通し。 2022年5月、オーストリアは雄の雛殺処分を動物福祉規則で禁止した。このため将来的に孵化前の雌雄鑑別技術が導入されると推定される。
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