婚姻関係があった場合(第1事案)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/24 15:25 UTC 版)
「死後懐胎子」の記事における「婚姻関係があった場合(第1事案)」の解説
まず、婚姻していた夫婦の夫の死亡後に、妻が懐胎した死後懐胎子の事案について、問題となった。 A男とB女は、1997年に婚姻した夫婦である。A男は婚姻前から白血病の治療を行っており、AB夫婦は婚姻後、不妊治療を行っていた。翌1998年、A男の病気治療により無精子症となることが危惧されたため、A男は精子を採取し、冷凍保存した。A男は、同年夏頃、B女や両親、周囲の人たちに対し、もし自分が死亡するようなことがあっても、冷凍保存精子を用いてB女に子を授かり、家を継いでほしい旨、話していた。A男の病気が寛解した1999年5月には夫婦の不妊治療再開を決め、同年8月末頃には冷凍保存精子を用いた体外受精を行うことについて、P病院の承諾が得られた。 しかし、A男は、その実施に至る前の同年9月に死亡した。B女は、A男の死亡後、A男の両親と相談の上、A男の冷凍保存精子を用いた体外受精を行うことを決意した。B女は、2000年に、P病院においてA男の冷凍保存精子を用いた体外受精を行い、2001年5月、これにより懐胎した原告の死後懐胎子を出産した。原告の死後懐胎子は、検察官に対し、A男(提供者)の子であることについて死後認知を求めた。 2003年11月12日、第一審判決(松山地判平成15年11月12日家月56巻7号140頁)は、請求を棄却した。すなわち、認知請求を認めるか否かは、子の福祉を確保し、親族相続法秩序との調和を図る観点のみならず、用いられた生殖補助医療と自然的な生殖との類似性、その生殖補助医療が社会一般的に受容されているか否かなどを総合的に考慮し判断すべきとした。その上で、当事案では、子の福祉の観点では問題はないが、提供者が死亡した後に体外受精・懐胎した場合には、自然的生殖との類似性がなく、このような懐胎につきその提供者を父とする社会的認識はなお乏しく、さらに、保存した医療機関に提出した書面などからすれば、提供者の同意を明確に認めることはできない、とした。 しかし、2004年7月16日、控訴審判決(高松高判平成16年7月16日高民集第57巻3号32頁)は、第一審判決を破棄して、原告が提供者の子であることを認知した。すなわち、子と提供者との間に血縁上の親子関係が存在し、当該人工生殖につき提供者の同意があれば、特段の事情がない限り、認知請求を認めることができるとし、当事案では、血縁上の親子関係及び提供者の同意が認められ、特段の事情もないとした。 検察官が上告し、後述の平成18年判決がなされた。
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