奴隷の権利
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/05 08:36 UTC 版)
奴隷は主人の所有物であり、主人は奴隷の生殺与奪の権利を持っていた。ただ厳格な家父長制があった古代ローマにおいては、家父長は自分の妻や子に対しても同様の権利を行使する事ができ、そうした意味においては奴隷も「家族なみ」であった。 自由人のように法的権利はほとんど認められていなかったが、都市部の奴隷は金銭や物などの個人財産を持つことや、事実婚を行うことは一般的に認められていた。しかしながら、犯罪の疑いが掛けられた奴隷に対して、主人が拷問の正当性を証明できた場合は、証言を引き出すための拷問は認められていたし、主人の殺害については近くに居た奴隷全員を処刑することも一般的であった。また、性的虐待も法的に問題はなかった。上流階級である主人の多くはストア哲学の考え方に影響を受けている場合が多く、哲学者セネカのように『奴隷も自由身分の使用人と同じように適正かつ公正に扱うべき』と考える人も現れるようになった。帝政期になると、主人の暴虐を理由として神殿に逃げこむ権利などが認められるようになった。 老いたり病気になったりして使役に適さなくなった奴隷について、ローマではティベリス川の中洲のティベリーナ島に捨てたとされる慣習があり、クラウディウス帝がこれを禁じようとしたとの記録もある。このように資産価値のなくなった奴隷の扱いは良かったとはいえない。
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