天然痘
痘瘡ウイルスを病原体とする感染症で、感染後高熱と全身の皮膚や粘膜に水痘様の発疹が多数あらわれる。天然痘は世界各地で約3000年前から、人類の歴史を変えるほどの大流行を繰り返してきた。特に乳幼児にとっては最大の病気で、これから回復しても瘢痕を残すことから、世界中で不治、悪魔の病気と恐れられていた。
痘瘡ウイルスはヒトにのみ感染するという疫学的特性と終生免疫が成立する種痘ワクチンを武器として、WHOが1958年から撲滅作戦を展開した結果、天然痘は1977年、ソマリアの青年の患者を最後に報告されておらず、1980年世界保健総会において根絶宣言が出された。(その後、実験室感染が数件報告されている)。天然痘は、撲滅宣言が出された唯一の感染症である。
WHOの作戦とは、天然痘患者が発生すると、その発病1ヶ月前から患者に接触した人々を対象として種痘を行い、ウイルスの伝播・拡散を防いで孤立させる事で天然痘の感染拡大を防ぐことであった。これはモッピングと言われる戦略で、ポリオ根絶対策でも現在用いられている。
痘瘡ウイルスは現在、米国とロシアのレベル4施設で厳重に管理されているが、近年、これを用いたバイオテロの危険性が叫ばれ、新たな局面を迎えている。(玉城英彦)
参考URL:WHO天然痘ホームページ http://www.who.int/topics/smallpox/en/
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