天然の有機ヒ素化合物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/22 07:18 UTC 版)
「ヒ素の生化学」の記事における「天然の有機ヒ素化合物」の解説
ヒ素は安定同位体を持つ天然に存在する元素であるため、地球上の生物は低濃度のヒ素に曝されており、これをバックグランドレベルのヒ素と言うことがある。生体が通常の環境で曝されているバックグランドレベルよりも低い濃度であれば、もしかしたらヒ素も有益な微量元素の1つである可能性があり、その証拠について検討されている。生体内に入ったヒ素は、しばしば有機ヒ素化合物へと代謝されることが知られている。地球上で比較的多く見られる有機ヒ素化合物は、アルセノベタイン(英語版)とアルセノコリン (arsenocholine)であり、両方とも多くの海生生物に見つかる。他に、いくつかのヒ素含有ヌクレオシド(糖誘導体)も知られている。有機ヒ素化合物のうちのいくつかは、メチル化の過程によって生じる。例えば、 Scopulariopsis brevicaulis というカビは無機ヒ素存在下でトリメチルアルシン(英語版)を産生する。アルセノベタインは、魚や海藻などのいくつかの海産物中に見つかり、キノコにも多量存在する。クリーンな環境下で食用キノコ Cyanoboletus pulverulentus が蓄積するヒ素の量は、乾燥重量で 1,300 mg/kg に達し、カコジル酸が主要なヒ素化合物である。ツチダンゴやその近縁種では、trimethylarsine oxide と methylarsonous acid というきわめて稀な有機ヒ素化合物が見つかる。平均的なヒトのヒ素摂取量は 10–50 µg/日 である。魚やキノコを摂取した後には 1000 µg 程度の値になることも珍しくないが、これらのヒ素化合物はほとんど無害であるため、魚を食べることの危険性はほとんどない。 自然界に存在する代表的な有機ヒ素化合物 アルセノベタイン(英語版)は、自然界で最も一般的に存在するヒ素化合物の1つである。-CO2H が -CH2OH に置換されたアルセノコリン (arsenocholine) もまた一般的である。 トリメチルアルシン(英語版)はヒ酸由来顔料への微生物の作用によって合成される。 ヒ素を含有するリボース誘導体 (R = いくつかの官能基) かつて Gosioガスとして知られていたトリメチルアルシンは強烈な臭気を持つ有機ヒ素化合物で、無機ヒ素化合物から微生物の作用によって合成される。 ヒ素(V)化合物は、容易にヒ素(III)へと還元され、原始地球において電子受容体として働いていた可能性がある。溶解した無機ヒ素を相当量含む湖は、ヒ素耐性を持つ生物群系を保有している。
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