天文学・自然学・神学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 19:59 UTC 版)
中期・後期にかけての対話篇においては、「イデア」論をこの世界・宇宙全体に適用する形で、自然学的考察がはかられていった。 初期の『ゴルギアス』においても既に、ソクラテスとカリクレスの問答を通して、「自然」(ピュシス)と「社会法習」(ノモス)の(「善」を目的とするという点での)一体性に、言及されているが、中期の『パイドン』では、アナクサゴラスの自然哲学を、「万物の根本原因」を「ヌース」(知性・理性)であると言っていながら、それをうまく説明できずに実際には各現象の部分的な構造説明に終始していると非難しつつ、プラトン等の求めているものがまさしくそうした世界全体・宇宙全体を覆う「万物の根本原因」であり、それに基づく「万物を貫く共通の善」であることが強調される。 『パイドロス』では、3つ目に提示された物語において、天球を駆け、その外側のイデアを観想する神々と魂の姿が描かれ、後期の『政治家』では、エレアからの客人によって神々による天体の統治についての物語が、『ティマイオス』ではティマイオスによって、超越的な善なる創造神デミウルゴスによって、この宇宙が彼の似姿として生み出されたことが、語られる。 そして、最後の対話篇である『法律』では、第10巻を丸々使って、無神論に対する反駁や、諸天体は神々の「最善の魂」、その知性(ヌース)によって動かされていること、神々は人間を配慮していて宇宙全体の善を目指していること等の論証を行う。これは、プラトンにとっての「神学論」であると同時に、歴史上初の「自然神学」(哲学的神学)であるとされる。 このように、プラトンにとっては、自然・世界・宇宙と神々は、不可分一体的なものであり、そしてその背後には、善やイデアがひかえている。 こうした発想は、アリストテレスにも継承され、『形而上学』『自然学』『天体論』などとして発展された。
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