大顎類説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 14:28 UTC 版)
フーシェンフイア類の大顎類説を支持する最大の根拠は、中大脳以降に及ぶ脳神経節の癒合と3つの神経網を有する視神経という、大顎類との神経解剖学上の類似による。それに加えて、フーシェンフイア類のいくつかの性質も、次の通り大顎類的に解釈できるとされる。 通常では単なるハイポストーマとされる部分は全体の形の類似(前述参照)により、大顎類の特徴的な頭楯と上唇の複合体と見なされる。通常では胴部の一部とされる前胸部は往々にして頭部の背甲に覆われ、後胸部との区分も明瞭のため、これを頭部の一部として解釈できるとされる。この場合、フーシェンフイア類の頭部は真節足動物として一般的な先節+直後4節以上が含まれるだけでなく、そこの脚も大顎類の頭部/頭胸部の小顎と顎脚に対応できるように思われる。更に、通常では後大脳性/第2体節由来とされるSPAは、大顎類として決定的な性質である第3体節由来の大顎のように、上唇(と解釈される部分)に覆われた最初の1節は内側に大顎的な内突起(歯)をもつため、大顎とも見なされる。これにより余った第2体節も六脚類と多足類のような、付属肢をもたない間挿体節として解釈できるとされる。特定の大顎類の高次系統に似た性質、例えば軟甲類と六脚類に似た後大脳の癒合、多足類に似た下咽頭の構造と不揃いな背板と脚も根拠として挙げられる。 これらの解釈により、フーシェンフイア類は大顎類で、少なくともその初期系統(ステムグループ)までには含まれるとされる。基盤的な大顎類であるフーシェンフイア類が癒合した後大脳をもつことにより、一部の甲殻類(鰓脚類など)に見られる後大脳の分離は(原始的でなく)二次的であることも示唆される。また、フーシェンフイア類に類縁の可能性があるユーシカルシノイド類が基盤的な多足類として支持されつつあり、フーシェンフイア類も多足類的性質を僅かにもつため、この2群があわせて多足類に近縁の可能性もあるとされる。基盤的な真節足動物説に祖先形質とされてきた特徴、例えば単調で数多くの肢節に分かれた脚は二次的な派生形質と解釈される。
※この「大顎類説」の解説は、「フキシャンフィア類」の解説の一部です。
「大顎類説」を含む「フキシャンフィア類」の記事については、「フキシャンフィア類」の概要を参照ください。
- 大顎類説のページへのリンク