大アイアースの死
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/17 07:31 UTC 版)
「トロイア戦争にかかわる伝説」の記事における「大アイアースの死」の解説
アキレウスの武具の分配 アキレウスの葬送競技が一通り終わるとテティスは、生前アキレウスが使っていた武具をアカイア人達の真ん中に置いた。そしてテティスは、アキレウスの遺体の争奪戦で最も活躍した者にこの武具を与えるので、我こそはと思うものは自ら名乗りでるようアカイア人達に言った。 するとアカイア人達の中から大アイアースとオデュッセウスの二人が名乗り出た。そして二人は自分達のいずれが最も活躍したのかの裁定を、イードメネウス、ネストール、アガメムノーンの三人に委ねた。 しかしながら裁定を委ねられた三人は、裁定を行う事を恐れた。なぜなら選ばれなかった一方が彼らに激怒し、そのために何らかの破局を迎えるであろう事は容易に想像されたからである。 そこでネストールは自分達で裁定を行う代わりに捕虜のトロイア兵達にいずれが遺体争奪戦の際彼らを苦しめたのかを述べさせる事で、アイアース、オデュッセウスのどちらが最も活躍したのかを決定する、という裁定方法を提案した。イードメネウスとアガメムノーンは自分達で裁定を行うのを避ようとこれに同意したので、捕虜達に活躍したのがどちらかを決定させる事に決まった。 評議のため捕虜のトロイア兵達が座の中央につれて来られ、自分こそアカイア勢の中で最も強いのだと信じるアイアースとオデュウセウスが互いに罵り合う中で、裁定が行われた。アイアースが舌戦でオデュッセウスにかなうはずもなく、オデュッセウスの言う意見にトロイア兵達は賛同し、彼らは全員、異口同音にオデュッセウスこそアキレウスの武具にふさわしい人物だと述べた。この勝利にオデュッセウスは一人酔いしれたが、残りのアカイア勢達はうめき声をあげた。なぜなら負けたアイアースの怒りが恐ろしかったからである。 アイアースの夜襲 逆上したアイアースは、アカイアの将達を殺すべく、するどい剣を手に持ち、夜の闇に紛れ彼らの船団へと向かった。しかしトリトーニス・アテーネーが彼を狂わせたため、アイアースはそばにいた羊達をアカイア勢だと思ってしまった。狂えるアイアースはただ一人、逃げ惑う羊達を剣で一匹また一匹と斬りつけて殺していった。ギリシア勢に無常な定めを投げ与えたつもりになって。アガメムノーンを殺し、メネラーオスを殺し、将という将を殺したかのように錯覚したアイアースは、死に絶える羊達の屍を超えて一頭の羊へと向かい、そしてオデュッセウスだと誤解したその羊を惨殺した。羊が血溜りの中に倒れると、勝ち誇ったアイアースは満足げに死体を見て、頬にぞっとする笑いを浮かべて羊の死体に嘲笑の言葉を浴びせた。 アイアースの自殺 我に返ったアイアースは、目の前一面に羊達の屍骸が転がっているのを見て茫然とした。神が仕掛けた罠に気づいたアイアースは、体から力という力が抜け落ちてその場に崩れた。そしてヘクトールとの一騎討ちの後、彼と交換して譲り受けた剣で、自らの首を貫き、砂埃の中に倒れた。 アカイア人達はアイアースを見つけたが、彼が倒れるまでは恐れをなして誰一人彼の元へと歩み寄る事はしなかった。アイアースが倒れると、彼らは死体の周りでうつ伏せになって倒れ付し、自らの頭にかけられるだけの砂という砂をかけながら号泣した。中でもアイアースの異母兄弟であるテウクロスと、アイアースの妻であるテクメーッサの嘆きは大きかった。二人は死体にむしゃぶりつき、涙を流しながら悲しみの悲鳴をあげるのだった。 オデュッセウスやアガメムノーンを始めとしたアカイアの将達は、アイアースに対する処遇を後悔し、彼らは死体を埋葬した。しかしアガメムノーンはアイアースの死体を焼く事だけは許さなかった。このためイーリオンで死んだ者達の中で彼だけが棺に収められる事になった。アイアースの死体はロイティオンに埋葬された。
※この「大アイアースの死」の解説は、「トロイア戦争にかかわる伝説」の解説の一部です。
「大アイアースの死」を含む「トロイア戦争にかかわる伝説」の記事については、「トロイア戦争にかかわる伝説」の概要を参照ください。
- 大アイアースの死のページへのリンク