均一塑性変形域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/11 21:11 UTC 版)
非鉄金属などの降伏点が存在しない例。図中では、 Rp0.2:0.2%耐力、Rm:引張強さ 軟鋼材などの降伏点が存在する例。図中で、ReH:上降伏点、ReL:下降伏点、Rm:引張強さ、Ap:降伏点伸び、A:破断伸び。 アルミニウムなど非鉄金属材料および炭素量の高い鉄鋼材料と、炭素量の少ない軟鋼とで、降伏の様子は異なってくる。非鉄金属の場合、線形(比例)から非線形へは連続的に変化する。比例ではなくなる限界の点を比例限度または比例限と呼び、比例限をもう少し過ぎた、応力を除いても変形が残る(塑性変形する)限界の点を弾性限度または弾性限と呼ぶ。実際の測定では、比例限度と弾性限度は非常に近いので、それぞれを個別に特定するのは難しい。そのため、除荷後に残る永久ひずみが0.2%となる応力を耐力や0.2%耐力と呼び、比例限度や弾性限度の代わりに塑性変形発生基準として用いられる。 軟鋼の場合は、応力-ひずみ曲線の線形領域から非線形領域へは不連続的に変化する。応力が高くしていくと、ある点で塑性変形が開始する。この点を上降伏点と呼ぶ。ここで、試料に対してを荷重制御ではなく変位制御で負荷を与えているとすると、強制的に与えられる伸びに追従して応力が発生する格好となる。変位制御で応力-ひずみ曲線を測定すると、上降伏点を過ぎた後、応力はあるところまで急激に下がり、ほぼ一定の応力状態が続く。下がったところの応力を下降伏点と呼ぶ。下降伏点の応力値で一定の状態が続いた後、再度応力が増加していく。このような降伏の過程を辿るのは軟鋼特有の現象で、コットレル雰囲気などの理論で説明される。上降伏点と下降伏点の総称を、あるいは下降伏点と上降伏点を区別しない場合は上降伏点を、降伏点と呼ぶ。下降伏点における一定応力値が続く範囲のひずみを降伏点伸びと呼ぶ。下降伏点と上降伏点を区別しない場合、降伏点における応力を、降伏応力、降伏強度、降伏強さ、あるいは単に降伏点と呼ぶ。 降伏後、応力-ひずみ曲線は再び上昇していく。ここからは、塑性変形が起きている材料に対してさらに塑性変形をさせようとしており、このため応力の増加が必要となる。この現象は加工硬化やひずみ硬化と呼ばれ、金属中の転位の運動が妨げられるようになるため発生する。加工硬化後の真応力と真ひずみの関係は、 σ t = K ϵ t n {\displaystyle \sigma _{t}=K\epsilon _{t}^{n}} で表すことができる場合が多い。K は強度係数、n はひずみ硬化係数や加工硬化指数、n 値と呼ばれ、材料固有の定数となる。多くの金属で n は0.2から0.4までの値を取る。 降伏後の応力-ひずみ曲線を公称応力で追うと、加工硬化で上昇していった曲線は、あるひずみで応力が極大値をとる。降伏から公称応力極大までの変形は、試験片全体にわたって均一に塑性変形が発生するので、均一塑性変形とも呼ばれる。均一塑性変形中は、全断面積で応力は均一に分布している。
※この「均一塑性変形域」の解説は、「応力-ひずみ曲線」の解説の一部です。
「均一塑性変形域」を含む「応力-ひずみ曲線」の記事については、「応力-ひずみ曲線」の概要を参照ください。
- 均一塑性変形域のページへのリンク