国策映画をめぐる議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/28 05:28 UTC 版)
本作は、大日本帝国の中国大陸進出を正当化するメロドラマであるとされ、李香蘭という中国名でヒロインを演じた山口淑子も、日本人に殴られた中国人娘が殴った日本人に好意を抱く描写を、中国人側から見ると屈辱的であると解説し、「日本は強い男。中国は従順な女。中国が日本を頼るなら、日本はこのように中国を守ってやろう」というのが本作のメッセージであるとしている。李香蘭を中国人と思っている中国人の友人からも、たびたび『支那の夜』を批判されていたという。 このように『支那の夜』は、日中戦争のプロパガンダを目的として作られた国策映画との考えが一般的であるが、これを否定する議論もある。企画には日本軍や大日本帝国政府関係者が関わっておらず、恋愛が主体のメロドラマであるこの映画は、当時の国策映画像と大きくかけ離れたものだった。そのため、軍人・映画評論家・映画検閲官・新聞の投書等から「国策に逆行する映画」である事を理由に、様々な批判が浴びせられた。 一見プロパガンダに思えるストーリーは、映画検閲を逃れる対策であったが、上海市の戦跡を舞台にしたメロドラマのシーンは検閲官を激怒させ、主演二人が抱き合うシーンは「弱腰すぎる」という理由でカットが行われた。 歴史学者の古川隆久は国策映画説を否定し、「典型的な娯楽映画」であると主張しているが、その古川も否定論は定説には至っていないと認めている。
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