国民主権の下における法規概念
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 01:34 UTC 版)
「法規」の記事における「国民主権の下における法規概念」の解説
以上のように、沿革的には、法規概念は本来的に立憲君主制における君主と国民との間の妥協の産物である。このため、立法の中核をなすものとして伝統的な法規概念が国民主権を前提とする体制においてもそのまま維持されるべきか否か、そもそも法規という概念が必要であるか否かが問題とされる。 立憲君主制の下における法規概念をそのまま維持する考え方もあるが、国民による民主的なコントロールを重視し、 権利を制限し義務を課すのみだけでなく、国民の一般的・抽象的(「一般的」とは、法の受範者が不特定多数人であることを意味し、「抽象的」とは、法の対象・事件が不特定多数であることを意味し、行政行為や裁判と区別する意味で重視される)な権利義務に関する規範を法規とする見解 権利・義務という枠組みさえも外し、単に一般的・抽象的な法規範を法規とする見解 などもある。また、立法の中核をなすものとしての法規概念は不要とする見解もある。 以上のような法規概念の捉え方の差異は、憲法の明文上法律事項とされているか否か明確ではないものとの関係で、特に問題にされる。 例えば、日本国憲法の下では、内閣の組織については法律事項とされており(日本国憲法第66条1項)、これに基づき内閣法が制定されているが、内閣の統括の下にある行政機関の定めをどうするかについては、憲法上明文の規定がない。そのため、立憲君主制の下における法規概念を前提とすれば国会が定める法律による必要はないとも考えられるが、実際には法律が制定されている(国家行政組織法など)。この点については、立憲君主制の下における法規概念を前提に、行政庁による行政処分は国民の権利義務に影響を与えるという前提のもと行政組織の定めも法規に該当するという理解、上記に掲げた法規概念を広く解する見解を前提として、行政組織に関する定めも法規に該当するとする理解などがある。 また、勲章や褒章などの栄典について法律で定めることを要するかも問題とされる。この点に関する政府による見解は、立憲君主制における法規概念を前提に、日本国憲法第7条7号による栄典の授与については、国民の権利を制限し又は国民に義務を課すものではないから法律で定める必要はないとし、太政官布告たる褒章条例などを政令で改正する措置を採っている。これに対し憲法学者の間では、日本国憲法の下では栄典制度は法律事項であり、政令で定めることはできないという見解が支配的である。
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