古英語期(紀元475–900)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/07 17:41 UTC 版)
「英語の音韻史」の記事における「古英語期(紀元475–900)」の解説
前母音の割れ一般的にいうと/x/, /w/, /r/ +子音, /l/ + 子音 の前でおきる。しかし母音によって異なる。 /u/で終わる下降二重母音が変化し、 /ɪ̆ʊ̆/ 短い/æ/, /ɛ/, /ɪ/から, 長い/æː/, /eː/, /iː/から短い/æ̆ɑ̆/, /ɛ̆ɔ̆/,長い/æɑ/, /eo/, /iu/になる。 (ea, eo, ioは表記上は長短が区別されない。)方言、例えばアングル方言では二重母音でなく単後母音が現れる。West Saxon ceald,Anglian cald > NE cold. /ɪ̆ʊ̆/と/iu/は紀元800~900年ごろに/ɛ̆ɔ̆/と/eo/になる。 上記の変化で/au/は/æu/を経て/æa/になった。PG /draumaz/ > OE [dréam] "愉悦" (cf. NE dream, NHG Traum). PG /dauθuz/ > OE [déaþ] > NE death (Goth [dáuθus], NHG Tod). PG /augoː/ > OE [éage] > NE eye (Goth [áugō], NHG Auge). /sk/はほとんどの音環境で/ʃ/になる。PG /skipaz/ > NE ship (cf skipper < Dutch schipper,変化していない). PG /skurtjaz/> OE scyrte > NE shirt, > ON skyrt > NE skirt. /k/, /ɣ/, /g/は前母音の前後で/ʧ/, /j/, /ʤ/になる。これに似た変化はフリジア語にもある。 後母音は後ろの音節に/i/、/j/が含まれる場合前母音化する(i-ウムラウト。紀元500 年ごろ)。i-ウムラウトはゴート語を除くゲルマン語の諸方言で起きる。現在のシュレースヴィヒ・ホルスタインの地域 (アングル族、サクソン族の故地)から広がったと思われる。 これにより新たに円唇前舌母音(/œ/, /øː/, /ʏ/, /yː/)が発生した。/œ/と/øː/はすぐに/ɛ/と/eː/に戻った。 短二重母音は全て/ɪ̆ʏ̆/, 長二重母音は全て/iy/になった。 (この解釈には異説がある。この音はieと書かれ、伝統的に/ɪ̆ɛ̆/と/ie/であると解釈されてきた。) 後期古英語ではこの二重母音は/ʏ/,/yː/に単音化される。 ウムラウトを引き起こした要素は後に語形に直接現れなくなる。 (/j/の消失、/i/の母音化) アクセントのない音節の弱化が進む:/oː/が/ɑ/になる。 後ろに長音節を伴う/ɪ/,/ʊ/は消失する。 口蓋性の二重母音化:語頭で/j/, /ʧ/, /ʃ/を含む音節では二重母音化が生じa > ea, e > ieになる。しかしこれが口蓋子音を表すための表記に過ぎないのなのか実際に二重母音で発音されたのかは議論がある。 (同じくOEではg, c, scの表記が/j/, /ʧ/, /ʃ/を表すのか/g/ or /ɣ/, /k/, /sk/を表すのか判然としない場合がある。)類似の変化として綴り上の慣習としてo > eo, u > eoがあることが知られている。/jung/ > OE geong /jung/ > NE "young"、もしgeongが文字通り/ɛ̆ɔ̆/であれば現代の語形は*yengとなっているはずである。 このような解釈に合致する中英語の例があるかどうかは議論がある。 語頭の/ɣ/は後期古英語で/g/になる。
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