古英語他におけるケニング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/08 02:27 UTC 版)
「ケニング」の記事における「古英語他におけるケニング」の解説
ケニングはゲルマン語派に共通して継承されてきたと伝統的には考えられているが、異論もある。なぜなら初期のゲルマン語のうちで、ケニングの使用が見られるのは古ノルド語と古英語の詩に限られているからである。「黄金」を指すwalha-kurna(ガリアの穀物)という表現は、チュルクエー黄金薄板に刻まれたノルド祖語のルーン文に確認できる。しかし、大陸の西ゲルマン語群で確認された語彙の中にはケニングは実際含まれていない。唯一の例として、古ザクセン語の『ヘーリアント』に「肉体」を指す"lîk-hamo"「体の服」という表現があるが、この複合語は西ゲルマン語群においても北ゲルマン語群においても散文で一般に使われる語に過ぎない(古英語 līchama、古高ドイツ語 lîchamo、lîchinamo、オランダ語 lichaam、古アイスランド語 líkamr、líkami、古スウェーデン語 līkhamber、スウェーデン語 lekamen、デンマーク語およびノルウェー語ブークモール legeme、ノルウェー語ニーノシュク lekam)。 古英語のケニングは、すべて2要素からなる単純な形式のものである。例えば「海」を指すケニングとして、『ベーオウルフ』には"seġl-rād"「帆の路」、"swan-rād"「白鳥の路」、"hron-rād"「くじらの路」が、『アンドレアス』に"bæð-weġ"「風呂の道」が、『海ゆく人』に"hwæl-weġ"「くじらの道」がある。ほとんどの古英語のケニングは、最初の要素は屈折せず、複合語の形をとる("heofon-candel"など)。属格句によるケニングも存在するものの、稀である("heofones ġim"など)。 古英語の詩人は、しばしば同義語を並べることがあり、これが指示物とケニングの並置になっていることがある。例えば『ベーオウルフ』の"Hrōðgar maþelode、helm Scyldinga"(スキョルドの一族の守り手、ロスガルは言った)などである。
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