反対解釈・類推解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 02:16 UTC 版)
類似した甲乙二つの事実のうち甲についてだけ規定のある場合に、乙については甲と反対の結果を認めるものが反対解釈であり、乙についても甲と同様の結果を認めるものが類推解釈である。類推解釈は、自然法論に相対する19世紀の歴史法学派により、慣習法を一度立法化した限りは、社会生活は可能な限り成文法規の解釈の形式によって規律されるべきとする法実証主義から説かれたものである。 刑法においては罪刑法定主義が妥当するため、被告人に不利な類推解釈は原則的に禁止されるから、反対解釈と後述する拡張解釈のいずれが妥当するかを巡ってしばしば対立が起きるが、民事事件においては、類推解釈と反対解釈は相反する関係に立つ。形式論を重視すれば反対解釈に結び付きやすいが文理解釈同様具体的妥当性を欠くおそれがあり、目的論を重視すれば類推解釈に結び付きやすいが法律の文言と離れた解釈になる分、法的安定性を害するおそれがある。そこで、どちらの解釈によるべきかは、特に当該制度・法規の趣旨・目的を考慮しなければならない。甲についての制度趣旨(立法趣旨)が、乙についても妥当するもので、たまたま甲を典型的な場合として挙げたに過ぎないとすれば乙について類推解釈(類推適用)が導かれるし、あえて甲のみについて規定した趣旨だと理解すれば反対解釈が導かれる事になる(→#概要画像)。 これに対し、類推解釈を採るべきことが極めて明白な場合を勿論解釈ということがある。 例えば、日本民法第738条は、「成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない」と規定しており、事理弁識能力を欠く成年被後見人についてのみ規定し、その能力が不十分である被保佐人については規定していないが、行為能力の欠ける程度が高く、正常な判断のできない成年被後見人ですら成年後見人の同意が不要であることから、それより行為能力の欠ける程度が低く、正常な判断が困難であるというに過ぎない被保佐人については、論ずるまでもなく、保佐人の同意は必要ないと解釈されている。 なお、類推解釈の体系的な位置付けについては諸説あり、可能な限り明文の成文法解釈の枠内に納めるべきことを強調する立場からは、むしろその実質は新たな立法に等しく、もはや解釈とは言えないとする説も主張されている。この立場からは、論理解釈の一種としての類推解釈ではなく類推適用と呼ばれ、理論上区別されることになる。サヴィニーは解釈と類推適用を峻別する立場である。
※この「反対解釈・類推解釈」の解説は、「法解釈」の解説の一部です。
「反対解釈・類推解釈」を含む「法解釈」の記事については、「法解釈」の概要を参照ください。
- 反対解釈類推解釈のページへのリンク