単一民族発言
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/13 23:41 UTC 版)
知的水準発言はアメリカで大きく取り上げられたが、この経過の中で、9月24日の最初の謝罪会見の際に中曽根は日本が単一民族であると発言した。これが「単一民族発言」問題を引き起こし、こちらは日本国内の問題となった。 まずこの発言に対して北海道ウタリ協会が反発した。もともと日本政府はアイヌ民族を正式に認めず、国連に対しても「日本には少数民族はいない」と報告しているという問題もあり、協会は10月17日に理事会を開き、代表団を送って、中曽根にアイヌ語で直接に抗議することを決定した。このことは、それまで国内であまりにもアイヌ民族が無視されていたこともあり、その存在をアピールする好機会でもあった。実際、これにからんで旧土人保護法の存在などが広く知られるようになったなどの影響があった。 10月30日には後藤田正晴内閣官房長官が記者会見を行い、中曽根の発言の釈明を行った。 『首相はアイヌ民族がいることを否定しているわけではない。国際人権条約で規定されている少数民族はいないということを述べている』『首相が単一民族と表現したのは、日本人は南方なり大陸なりからきた人間と、もともと日本列島に住む人間とが長い年月の中で混然一体となってできたという程度の趣旨からだ 下記参考文献の著者(失言王認定委員会)は、これを以下のように判断している。恐らく中曽根はその発言時にはアイヌのことは全く考えていなかった。しかしその発言のためにアイヌの反感を買っただけでなく、これまでの政府のアイヌに対する対処までが一般の目を引くことになってしまった。そこで、アイヌを認めつつもそれを国連に報告していないのを、少数民族ではあるが、「迫害された少数民族」ではないとしたのが前段、さらに首相発言との整合性として日本人そのものがいろいろ混血でできているので一々区別するには当たらないというのである。 政府はこの方針で切り抜ける積もりになったらしいが、これが新たな問題発言を引き起こした。 10月21日の参議院本会議での共産党児玉健次議員の質問に対する答弁で中曽根はこう言った。 『日本国籍を持つ方々で差別を受けている少数民族はいない。梅原猛さんの本を読むと、アイヌとか大陸から渡ってきた人々はそうとう融合しあっている。私も眉なんかも濃いし、ひげも濃い。アイヌの血はそうとう入っていると思う』 ウタリ協会はこの発言に強い不快感を表明した。もっとも、政府側もこの発言は問題として、翌22日の参議院本会議で遠藤要法務大臣がアイヌへの人権侵害の存在を認め、「首相に対しても、差別的言動は十分遠慮して頂きたいと要請しておきたい」と述べた。
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