医薬品問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/22 14:06 UTC 版)
豚を禁忌とするのは肉だけでなく、豚に由来する酵素や蛋白質にまで及ぶこともある。これは医薬品や化粧品などにも適用範囲が及ぶこともあり、実際にサウジアラビア、イラン、インドネシアなどでは法律で禁止されている。 現代の製薬業界において細菌の培養に必要な培地の生産に、豚由来の分解酵素が使用されていることは珍しくない。このため、非常に広範囲の医薬品がハラームである可能性があり、豚由来の分解酵素が使用されているかどうかは非常にわかりにくいためムスリムの間では難しい問題になっている。法学者ユースフ・アル=カラダーウィーは、前述のイスティハーラ理論に従い、豚由来の製剤をハラールと判断するファトワーを出しているが、いまだイスラム世界の統一見解とはなっていない。 また、国によっても態度が大きく異なる。サウジアラビアでは、医療に関しては比較的寛容な姿勢が見られ、代替品がないという条件付きで消毒用アルコールや豚由来製剤の使用を認めている。豚皮を使った人工血管の移植なども、他に術がなければ合法とのファトワーが出ている。 しかしインドネシアではやや厳しく、2009年には聖地メッカを巡礼するために必要なワクチンの接種において、ワクチンの製造に豚の酵素を使用していたことが問題になった。2000年にも、インドネシアの味の素で発酵菌の栄養源を作る過程で触媒として豚の酵素を使用していたために、日本人技術者1人を含む東ジャワ州モジョクルトの味の素工場幹部4人が、消費者を保護する法に違反した容疑で逮捕される事件が起きている。ハラールの基本的な考え方では、豚と一緒に保管されたり触れたりした食品も禁忌とされるため、製品に全く残留していなかったとしてもイスラム思想的には禁忌とせざるを得ない事情がある。このため、インドネシア当局から触媒であっても認めないとする厳しい判断が下された。味の素は触媒を変更することで再度、販売の許可を得た。
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