医療被曝の現状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 05:37 UTC 版)
放射線診断、放射線治療の進歩と普及に伴い日本を含む一部の医療先進国では医療被曝の実効線量が自然放射線からの被曝より大きくなっている。原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の2008年の報告によると、全世界での放射線診断は1988年には13.8億回、一人あたりの平均線量は0.35mSvであったが、2008年には31億回、平均線量は0.62mSvとなった。医療先進国の平均は1.92mSvとなっているが日本では2.3mSv、米国は3.0mSvと推定されている。放射線治療に関しては1991~1996年の間は年間470万回であったが、1997~2007年の間では510万回に増加している。直線加速器による治療も増えてきている。医療先進国では放射線治療は1千人あたり年間2.4回(世界平均は0.8回)となっており、頻度は増え続けている。 日本においてはCT機器の普及率が他国より突出しており、人口百万人あたり92.6台(2002年)、2位がオーストラリアで45.3台(2004年)、3位アメリカ32.3台(2004年)であった。この普及率の高さにより、容易に悪く言えば安易に検査を受けることが可能である。CTを1回受けるだけで6.9mSv、胃のX線検査では0.6–2.7mSvの医療被曝がある。 放射線診療における代表的なX線検査での被曝量は、胸部 0.04mSv、腹部1.2mSv、上部消化管 8.7mSv、胸部CT 7.8mSv、腹部CT 7.6mSvである。なお、骨髄移植のために行われる全身照射の一回の照射量は2,000mSv(2Gy)で、1日2回の照射を3日間行い、総量で12,000mSv(12Gy)を照射する。肺がんに対する定位放射線治療では1回10,000mSv(10Gy)以上の大線量を4回から5回照射して1週間程度で終了させてるプロトコルが主流である。
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