医官としての勤務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 16:25 UTC 版)
幹部候補生学校の卒業と同時に、二等陸・海・空尉に任官し、研修医官となる。旧軍でも医科大学卒の者の軍医としての振り出しは軍医中尉からであったが、これは医師という特別な技能を有する者について、兵科将校とは別に尊重する必要があるためである(任官までの修業年限が長いことに対する調整と、他の職業と異なり医学における莫大な学費を投じたことに対する調整という意味合いもある)。 以前は大半が防衛医大の研修医になったが、今は自衛隊中央病院と防衛医大をそれぞれ計2年間になるカリキュラムで研修する。研修医のマッチングは行われていないし、防衛医大や自衛隊中央病院は他大学卒の初期研修(マッチング)対象外である。研修内容は厚生労働省の定めるものに沿った研修である。 2年間の初任実務研修が終了した後、それぞれの部隊に配属される。この時期(初任実務研修終了直後)の医官は陸上であれば方面衛生隊などの衛生科部隊配属が基本である。配属直後、陸自衛生学校でBOC(幹部初級課程)へ入校が命じられる。海上自衛隊の医官の6割は海上自衛隊潜水医学実験隊での潜水医官課程にて、航空自衛隊の医官と海上自衛隊の残りの4割の医官は、岐阜病院教育部及び航空医学実験隊での航空医官課程にて、それぞれ1カ月半ほどの教育を受ける。 部隊にもよるが、最大週2日の部外通修が認められるので、その間に研鑽を積む者が多い。病院配属であっても、その所属だけでは医師としてあまりにも症例が不足しているケースが大半である。部隊勤務1年半を経過した1月に、全員が1尉に昇任。その半年後に、専門研修医官となる。その間、潜水医官課程・航空医官課程を修了した海自及び空自の医官は、それぞれ潜水医官記章及び航空医官課程修了後2年間の部隊勤務経験を経た後に航空医官記章が付与される。 概ね2年間の部隊勤務が終わると、専門研修が命ぜられる。ほとんどの者は防衛医大・自衛隊中央病院で研修している。専門研修医官(専修医)は、常に人手不足に悩む防衛医大の各医局にとって、貴重な実戦力である。専修医は2年。これを終了すると、陸では衛生学校のAOC(幹部上級課程)に入校する。海と空では、それに相当するような教育課程は無い。 専修医を終わっても、学位は授与されない。それ以上の医学を研鑽したい者は防衛医大研究科を受験する。受験科目は英語と専攻科である。研究科は大学院に相当し、4年間在籍して審査を経て、「博士(医学)」の学位が独立行政法人大学改革支援・学位授与機構から与えられる(防衛医科大学校には学位授与権がない)。それぞれの科にもよるが、採用人員は年に1~2名程度と少ない。研究科を修了した者のうちで、研究者・教育者に向いていると判断された者は、しばしばUC転官を勧められ、制服を脱いで、文官たる防衛医大助手(防衛教官)となり、防衛医大を支える。
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