労組側の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/17 04:34 UTC 版)
この事件の直接の原因は順法闘争によってダイヤが混乱したことであるが、その背景には、当時(特にマル生運動が挫折して以降)の国鉄職員による怠慢かつ横柄な業務態度があり、それに対して日頃から不満を持っていた利用客の不満が一気に爆発したことも事件の一員となった。職員のおごりは、窓のついている(つまり利用者の目に触れる可能性がある)運転室や駅構内など、乗客の目の届く場所での服務の乱れに象徴的であったが、目に触れない場でのたるみもあった。一例としては、高崎線に存在した「国鉄職員専用列車」と揶揄(やゆ)される列車の存在である。これは、朝の通勤時間帯に一部の試運転列車を踏切前で機外停車させ、至近に居住する国鉄職員を乗り降りさせて通勤の足代わりに使うというもので、機材私物化の最たるものであった。このように、ひたすら自意識を肥大化させた国労・動労組合員の増長の結果が事件の背景の一つにあった。 また、国労宣教部は「影響力が大きく、効果があるから」という理由で、乗務員に順法闘争の際には通勤列車を狙うように指導していたという事実もあった。 1975年(昭和50年)3月、国鉄本社常務理事格で首都圏本部長に異動した尾関雅則は、この問題について労組の問題点と絡めて現場の職員同士の信頼感の欠如、本音と建前の乖離を挙げ、「「お客さんから声をかけられたら、必ず笑顔で返事をしよう」といった、ごく基本的なことを徹底することだと思う」「基本動作の積み重ねが悪い評判を少しずつ消していく。建設は苦闘であり、破壊は一瞬です」「綱紀粛正を云々するなら、ぐずぐず説教するよりも毎朝決まった時間に出勤することをはっきり言った方が実際の効果はありますよ」と述べている。 また、このような闘争を継続した場合に暴動が発生する可能性については薄々予見されていたらしく、朝日新聞は13日の夕刊に「恐れていたことがついに起きた」と書いた。全国サラリーマン同盟代表委員の青木茂は公務員のスト権自体は必要なものと断った上で「ここまでしょっちゅうやられていたのでは同情しきれない。それにしても運転士が乗客を恐れ逃げ出してくるなんて職業意識が無いんですね。」と事件当日にコメントした。
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