内部EGR
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 21:05 UTC 版)
「バルブオーバーラップ」も参照 内部EGRは、バルブオーバーラップの利用や排気バルブの閉時期を調整することで排気ガスを再循環させる手法である。もっとも多く用いられるのはバルブオーバーラップの利用で吸排気ポートの圧力差により排気ガスを再循環する方法である。しかし圧力差が不安定であるためEGRの制御には限度がある。オーバーラップ以外の手法としては、排気バルブの閉弁を吸気工程途中まで遅らせることで排気ポートからの再導入(排気遅閉じ・吸気遅開き)、排気工程で吸気バルブを早期に開弁することで吸気ポートに排ガスを逆流させての再吸気、吸気工程で排気バルブの一時開弁、排気バルブを排気工程途中で閉弁し排気ガスを残留させるなど多岐にわたる。この中で多く用いられているのは排気遅閉じ・吸気遅開きである(後述)。外部装置ではなく動弁系で対応できるためスペースを抑えられ、構造も単純にできる利点がある。運用上においても高温の排気ガスに晒されたりカーボン等の堆積により動作不良を起こす可能性がある外部EGR装置と比べてロバスト性に長けるというメリットがある。排ガス清浄性ではNOx低減があるが外部EGRに比べると炭化水素(HC)低減への効果が大きいとされる。これは内部EGRで再導入される排気工程末期の排気ガスには、消炎領域で発生する未燃焼ガス(HC)が多く含まれるためで、それを再燃焼させることでHCが低減されるためである。古くよりバルブオーバーラップを広くとった場合に一定負荷領域での省燃費性(主にポンピングロス低減から)や排ガス清浄性が良好となることは知られておりEGRとしての利用は考えられていたが、固定バルブタイミングでは変動する負荷や回転数に対応できず限定的な利用に留まっていた。しかし可変バルブ機構の登場によりバルブタイミングを可変することでオーバーラップ量や排気の閉弁時期を変化させることが可能となり、内部EGRを状況に合わせて利用できるようになった。これが可変バルブタイミング機構を採用する理由の一つとなっている。特に吸気側に加え排気側にも可変バルブタイミングを採用した場合においては、より積極的な排気の導入が可能となる。例えば排気カムを遅角することで吸気工程の途中まで排気バルブを開いておくことが可能であり、更に吸気カムも遅角し遅開きとすることでオーバーラップを最小限にしつつEGRを行うことが可能である。この手法はカム位相が吸排気同時に変化してしまうOHVやSOHCで利用できる。内部EGRに対しては吸気側より排気側の制御が有効なため一部ではあるが排気側のみを可変バルブタイミングとするケースや、排気側を可変バルブタイミングとすることで外部EGR装置を省くケースがある。 一方で、外部EGRに比べ、ガス量の制御性や導入量では劣り、導入ガスの温度が高いというデメリットが存在する。この温度が高いというのは外部EGRとの比較した場合の導入ガスの温度であり燃焼温度はEGR未導入時と比較すると低い。これにより6ストローク機関の競技用エンジンでは、エンジン温度の低下を防いでいる。
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