典型契約・非典型契約
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 13:52 UTC 版)
典型契約 民法典の規定する契約類型を典型契約という。日本法においては、贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用(雇傭)、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解の13種類の契約をいう。有名契約ともいう。典型契約は広義には商法典の規定する契約類型、すなわち日本法においては、商法第2編商行為に規定する9種類の契約である商事売買(売買)、交互計算、匿名組合、仲立営業、問屋営業、運送取扱営業、運送営業、商事寄託(寄託)、保険をも含む。典型契約については民法と商法で二元的に定める法制(フランス民法やドイツ民法)と、まとめて一元的に定める法制(スイス民法)とがあるが、日本では前者の法制をとる。 古代ローマ法では、売買、賃貸借、委任、組合の4種のみが典型契約とされていた。しかし中世に入ると取引の複雑化により典型契約の数は増えた。 典型契約の種類は各国ごとに異なっており、例えばフランス民法は典型契約として売買、交換、賃貸借、会社、貸借、寄託、係争物寄託、射倖契約、委託、保証、和解の11種類を規定する。 契約自由の原則により基本的に契約の内容や効果は当事者間で自由に定めうるにもかかわらず、法律で典型契約を規定する意味は、同時代の社会においては契約類型がほぼ一定しており、また、当事者意思が不明確な場合に契約解釈の標準とするためである。 非典型契約 具体的な契約について、全体的にも部分的にも契約の定型(典型契約)に適合しない契約を非典型契約という。日本では、出版契約などがこれにあたる。無名契約ともいう。 中世には典型契約は「衣をまとった合意」と呼ばれたのに対し、典型契約に該当しない契約は「裸の合意」といわれ法的効力が認められなかった。近代になって人間は自分の意思に従って自由に権利や義務を発生させることができると考えられるようになったことで無名契約にも法的効力が認められるようになった。 混合契約 具体的契約について、それに含まれる要素を個別的にみると契約の定型(典型契約)に属しているとみられるものの、全体的にみるとそれが相互に結びついており当事者が一体的なものとしてみている契約。混合典型契約、混成契約ともいう。製造物供給契約がこれにあたる(請負と売買の混合契約)。なお、契約自由の原則から、基本的には契約の内容や効果は当事者間で自由に定めうるとされ、混合契約についても当事者の真意や慣行を考慮して合理的な解釈を行うべきで典型契約の規定を機械的に適用すべきでないとされる。
※この「典型契約・非典型契約」の解説は、「契約」の解説の一部です。
「典型契約・非典型契約」を含む「契約」の記事については、「契約」の概要を参照ください。
- 典型契約非典型契約のページへのリンク