低レイテンシには不向きな静止衛星
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/22 20:07 UTC 版)
「衛星インターネットアクセス」の記事における「低レイテンシには不向きな静止衛星」の解説
静止軌道は赤道直上で離心率はゼロに近く、地球の自転周期と同じ周期を持つ地球同期軌道である。静止軌道上の物体は、地上の観測者からは全く動かず一定点に留まっているように見える。通信衛星や気象衛星は静止軌道が使われることが多い。常に緯度0°上にあり、円軌道を描いているため、静止軌道の位置は経度のみしか変わらない。 地上通信と比較すると、全ての静止衛星通信は静止軌道までの35,786kmを往復する必要があるためにレイテンシが高くなる。光速であったとしても、この遅れは大きなものになり、他の全ての遅れを無視しても約250ミリ秒となる。衛星は空の一点にいるため、遅れの最小値は変化する。衛星が真上にある場合は239.6ミリ秒、地平線近くにある場合は279.0ミリ秒となる。 インターネットのパケットにとって、応答を受け取るまでにこの遅れは2倍になり、それが理論的な最小値となる。その他の遅れの要因を考えると、ユーザからISPまでの片方向のレイテンシが500ミリ秒から700ミリ秒、ユーザに返るまでの合計のラウンドトリップタイム (RTT) が1000ミリ秒から1400ミリ秒となる。これは、ほとんどのダイヤルアップ接続の150ミリ秒から200ミリ秒、ケーブルテレビやVDSL等の高速サービスの15ミリ秒から40ミリ秒という合計レイテンシよりもかなり大きい。 静止衛星ではレイテンシを減少させる方法はないが、TCPアクセラレーションを用いて送信側と受信側の間のフィードバックループを分割することで、パケット当たりのRTTを短くすることができる。この技術は新しい衛星インターネットサービスには通常用いられている。 レイテンシは、ウェブサーバとクライアントの間で膨大なデータのやりとりを必要とするTLSのような安全なインターネット接続の開始にも影響を与える。1つ1つのデータの断片は小さいものの、多くのラウンドトリップを必要とすることで他の形のインターネットアクセスと比べて長い遅延が発生する。SaaSやその他の形のオンラインサービスを使う場合にも同様の問題が発生する。
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