企業がパテント・トロールの攻勢に弱い理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/09 01:52 UTC 版)
「パテント・トロール」の記事における「企業がパテント・トロールの攻勢に弱い理由」の解説
通常、同業の製造業・サービス業の企業同士(例えば自動車メーカー同士や電機メーカー同士)では、同業他社が自社の特許権を侵害している疑いがある場合でも、損害賠償や製造差止などを要求することは少ない。これは、同業者間では相互に同じような技術を有している可能性が高く、相手側の特許侵害を追及した場合、逆に相手側からも特許侵害で反撃されるリスクがある上、競合企業であっても部品購買などで互恵関係があることも多いため、紛争がこじれると互いに不利益になるとの意識が強いからである。そのため、特許権侵害の紛争が起きても比較的友好的にライセンス料支払いの交渉をしたり、相互に自社の特許権をまとめて実施許諾するクロスライセンス契約に持ち込んだりするなどして円満に解決を図ろうとする。 しかし、パテント・トロールは自らは製品の製造やサービスの提供を行っておらず、他社の特許を侵害するリスクがないので、強気に権利行使することができる。訴えられる企業の側としては、パテント・トロールに対し特許侵害で反訴することはできず、パテント・トロールは製品の製造販売・サービス提供を行っていないため差止請求による牽制もできないため、クロスライセンス契約による解決は実質的には不可能である。また、売上が大きく幅広くビジネスを行っている大企業であるほど、特許紛争で負けて製造やサービスの提供が中止に追い込まれた場合の損害が大きくなる。さらに、訴訟が長引くだけでも、新製品の開発の計画が狂ったり、顧客に不安感を与えて販売に悪影響があったり、人的リソースを訴訟に割かざるを得ない等の多大な不利益がある。このため、パテント・トロール側の要求が不当なものであったとしても、それに応じることが起こりうる。 また、弁護士費用を含む訴訟費用についてみると、訴訟費用と同程度以下の実施料を求められた場合には、例え裁判で争って勝ったとしても求められた実施料以上の費用がかかることになるため、当初からパテント・トロールの要求に応じて裁判を回避した方が損失を抑えることができることになる。この傾向は、特に証拠開示(ディスカバリー)手続等によって弁護士費用が膨大になる米国において顕著である。
※この「企業がパテント・トロールの攻勢に弱い理由」の解説は、「パテント・トロール」の解説の一部です。
「企業がパテント・トロールの攻勢に弱い理由」を含む「パテント・トロール」の記事については、「パテント・トロール」の概要を参照ください。
- 企業がパテント・トロールの攻勢に弱い理由のページへのリンク