人工芝改良の歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 02:06 UTC 版)
人工芝が日本に導入された当時、天然芝の管理方法はあまり進歩しておらず、管理が行き届かないケースが多かったこともあり、人工芝のフィールドは「守りやすい」「景観が美しい」など、選手・ファンからは概ね好意的に受け止められていたが、グラウンドの管理面では雨天時の排水性が問題となった。初期の人工芝は、グラウンド周囲にコンクリートの側溝を設置し、ファウルグラウンドや外野をこの側溝に向かってやや傾斜させることで雨天時の排水を行っていたが、このような表面排水方式はグラウンド中央部分の排水が難しい。そのため各球場ではグラウンド上に吸水自動車を走らせて排水を行っていた。 雨天の多い日本では人工芝の排水性の無さが早急に解決すべき課題となり、その結果、旭化成は「サラン透水性人工芝」の開発に成功する。この人工芝は透水性を実現したことで地中に設けたパイプを使って排水することが可能となり、結果、初期人工芝では必須であったグラウンドの傾斜や吸水自動車を不要とした。当初、この透水性人工芝はヨーロッパのサッカースタジアムで使用されていたが、1982年3月に明治神宮野球場が野球場として初導入する。これを契機として透水性人工芝は全国の野球場に広まっていった。 また開発当初の人工芝はパイル(毛足)が短く、スライディングすると火傷や擦過傷を負うことも少なくなかった。更に天然芝と比較するとクッション性が低いため、足腰など選手の身体への負担増大も指摘されるようになり、この点についても品質向上が図られるようになった。先に述べた旭化成の「サラン透水性人工芝」はクッション性も考慮し、人工芝(パイル丈13mm)の下に厚さ14mmの透水性アンダーマットを敷いていたが、1990年代後半になるとパイルの丈は5~6cmと長くなり、その下層部に砂・土・ラバーチップを充填してクッション性を高めた「ロングパイル人工芝」が開発され、日本のプロ本拠地野球場でもロングパイル型を導入するところが増加した。またショートパイル型でも、長さの異なる2種類のパイルを用いることで、クッション性の向上に加えて景観も天然芝に近づけた製品がある。 このような改良が施された人工芝は「ハイテク人工芝」とも呼ばれ、従来の人工芝と比較して身体への負担が軽く、プレー条件も改善されていることなどから選手からも概ね好評である。とりわけ、屋外野球場として人工芝を使用している明治神宮野球場はデーゲームで高校や大学、社会人などアマチュア公式戦を行った後、ナイターでプロ野球を開催するなど、同日中に複数の試合を行うことが多いため、耐久性のある人工芝の特徴を活かしている。
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