主なタキサン類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/03 03:27 UTC 版)
タキサジエン タキサン環を持ち、パクリタキセルやバッカチンIIIの生合成における前駆体となる。イチイによる生合成では、ゲラニルゲラニルピロリン酸からタキサジエン合成酵素 (EC 4.2.3.17 ) によってタキサジエンが合成される。 バッカチンIII 既存のタキサン系抗がん剤(パクリタキセルとドセタキセル)に共通してみられる、タキサン環にオキセタン環が付加された四環性の炭素骨格を有する。バッカチンIIIの脱アセチル化物である10-デアセチルバッカチンIIIが、ヨーロッパイチイ(Taxus baccata)から比較的多く採取できることから、パクリタキセルやドセタキセルの半合成における前駆体として利用されている。イチイによる生合成では、10-デアセチル-2-デベンゾイルバッカチンIIIから2α-ヒドロキシタキサン2-O-ベンゾイルトランスフェラーゼ (EC 2.3.1.166 ) によって10-デアセチルバッカチンIIIが合成される。 パクリタキセル(タキソール) タイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)の樹皮から1966年に発見された。抗がん剤として用いられる。イチイからごく微量しか採取できず抗がん剤として十分な量が供給できなかったことから合成方法が盛んに研究され、1994年にヨーロッパイチイの針葉・小枝から採取される10-デアセチルバッカチンIIIからの半合成法が実用化され,抗がん剤として安定した供給が可能となった。 ドセタキセル(タキソテール) パクリタキセル類縁の抗がん活性を持つ化合物のスクリーニングを通じて開発された抗がん剤。ヨーロッパイチイの針葉・小枝から採取される10-デアセチルバッカチンIIIから半合成される。 タクスチニンA タクスチニンAは、炭素数6/8/6の三環性のタキサン環とは異なる、炭素数5/7/6の三環性のアベオタキサン環(アベオタキサジエン環、A-ノルタキサン環ともいう)を持つ化合物として初めて発見されたタキソイドである。タクスチニンAは、冨士らのグループによって1992年にチュウゴクイチイ(Taxus chinensis)から発見され構造が同定された。 ブレビフォリオール ブレビフォリオールは1991年にバルザ、橘らのグループによってタイヘイヨウイチイから発見されたタキソイドである。発見当初ブレビフォリオールはタキサン環を持つと考えられていたが、実際にはアベオタキサン環を持つことが1993年にゲオルクらのグループとアペンディーノらのグループによって同定された。 タキサスパインD 日本のイチイ(Taxus cuspidata)から1995年に小林、細山らのグループによって発見された。既存のタキサン系抗がん剤と異なり、それらの微小管への結合に重要だと考えられてきたオキセタン環もタキサン環のC-13の位置のN-アシルフェニルイソセリン基の大きな側鎖も持たないが、それらと同様に微小管脱重合阻害作用を持ち抗がん活性を有する。また、P-糖タンパク質の機能阻害作用をもち、既存のタキサン系抗がん剤に治療抵抗性をもったがん細胞に対して抗がん活性を示すことが知られている。
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