中世中期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/23 23:17 UTC 版)
「トロープス」、「セクエンツィア」、「典礼劇」、および「グルジア多声聖歌」も参照 グレゴリオ聖歌による画一化が起こった西方教会であるが、すでに中世中期には多様化の方向性が生まれていた。西欧の教会音楽はモノフォニーからポリフォニーに拡大していったのもこの頃である。ポリフォニーそのものは西方教会音楽のみの独創ではなく、世界各地にみられるものであり、東方教会でもグルジア正教会が世界でも最初期に取り入れているが、ポリフォニー導入により西方教会音楽は多様な表現が可能となり、その後の発展の礎となった。その始まりの時期は正確には不明であるが、イギリスのウィンチェスター大聖堂で用いられていたトロープスの、10世紀から11世紀の譜の異本にはポリフォニーの記載がある。 トロープスとは、短い歌詞に長い旋律が対応している歌に対し、その旋律の各音符に詞を付したり、旋律を引き伸ばして作られたりしたものを言う。ロマネスク時代:11世紀に、最古のオルガヌム集ウィンチェスター・トロープス集が成立している。また同時期に、セクエンツィアも作曲された。現代の音楽にも残っているよく知られているセクエンツィアには「ディエス・イレ」(現在の典礼ではほとんど用いられない)などがある。しかし、セクエンツィアはその大半が失われ、現代では数曲を残すのみである。セクエンツィアの詞が、正統信仰を損なうおそれがあると看做されたからであった。 トロープスから典礼劇が発展した。典礼劇は後世のオラトリオの萌芽と見ることも可能である。この時代サン・マルシャル楽派(サン・マルシャル修道院)とノートルダム楽派(ノートルダム大聖堂)の二つが典礼音楽の中心地となった。1250年ごろにはモテットが盛んになる。
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