世界気象の調査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 16:07 UTC 版)
「ギルバート・ウォーカー」の記事における「世界気象の調査」の解説
モンスーンが影響する範囲は広い。何らかのモンスーンの予兆をつかもうとすれば、それは世界中の気象データ間の統計的な関係を考慮する必要があるということを意味した。しかも、予兆のための調査は空間の違いだけではなく、時間的な違いを考慮した相関関係も含めなければならなかった。ウォーカーは世界中の気候変数(特に降水、温度と気圧)の間の関係を調べる際に、相関関係と回帰式を使った。また、彼はインド内外の気象学上の現象について、前後2つの季節までの先行と遅延関係、つまり自己相関(ラグ相関)も計算した。これらは、気象学において先駆的な取り組みであっただけでなく、後述するように統計学に新たな手法をも生み出した。 数年の研究の後、彼はインドの夏季の雨量を予測する最良の因子として、5月末のヒマラヤ山脈の降雪量、5月のモーリシャスの気圧とザンジバルの雨量、4月と5月の南アメリカの気圧を選んだ。そしてこの相関を用いたモンスーン予報を「シーズナル・フォアシャドウイング(seasonal foreshadowing)」と呼んだ。フォアシャドウイングとは確率的なあいまいさを含んだ予報という意味だった。彼は定量的な議論が出来るように、相関係数のような算出した統計量には、必ず見込み誤差(probable error:今日でいう標準誤差に相当)を付した。 インド・モンスーンの予報調査のために算出した相関係数は3000個とも言われている。電子計算機がない当時としては、大変な計算量だった。その結果、#後述するように1923年に北大西洋振動、北太平洋振動、南方振動という3つの気圧振動を発見した。この中で南方振動が最も大規模なものだった。しかし、後述のとおり#南方振動はインドのモンスーンの予報としては使えず、むしろそれ以外の世界各地の異常気象の前駆的現象、つまり予兆としての相関が高かった。しかしながら、そのメカニズムがまだ知られていなかった当時、広く取り上げられることはなかった。
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