不良債権拡大
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 15:02 UTC 版)
景気が後退し、地価・株価が下落するとともに、従前金融機関が多額の融資をしていた企業の業績も悪化し、返済が順調に行えない企業も現れた。返済に支障が予想される場合にはリスケジューリングを行ったり、実際に返済が滞った場合には不良債権に区分し直し、引当金を積み増す必要があるが、これは金融機関の会計を圧迫して経営上の自由を奪うと同時に対外的にも信用を損ねるものとして嫌われ、査定に手心を加えて正常債権とみなしたり、追い貸しをして形の上だけでも本来の債務の返済を正常に行わせるなどして、引当金の積み増しを免れるとともに自身の経営を健全に見せる弥縫策がしばしばとられた。すぐに景気は回復して損失も回復できると期待し、ただちに債権を処分して損失を処理・確定することをためらわせたが、この間も混迷の度合いは深まり、不良債権はその数と額を増して重篤化した。 一方で、外部、殊に日本国外からは金融機関が不良債権を隠していると映り、日本の金融システムに対する不信感が抱かれた。殊に、日本の会計基準が簿価会計であることが、高値掴みした資産の劣化を隠す手段となり、不良債権隠蔽の温床になっていると指摘し、ただちに時価会計に移行して不良債権を詳らかにし、金融機関の経営状況を公開するように迫った。 銀行への資本注入のための公的資金枠は、1999年12月には70兆円にまで積み増すことが決定された。 2002年度の全国銀行の不良債権の処分による損失の累計額は、81兆円5,000億円に達した。不良債権処理にともなった銀行の損失累計額は、1992年〜2002年度末で94兆円となった。 全銀行の不良債権の純損失の総額は100兆円という規模となった。日本のバブル崩壊で発生した不良債権は、約200兆円と言われている。 2001年の日本興業銀行調査部によると、バブルの後始末としての不良債権処理は、1997年には終了していたとされている。 田中秀臣は「バブル期の銀行の貸し出しの総額よりも、現在(2003年)の不良債権処理額の方が上回っている。現在の不良債権は、バブルと無関係であり、その後のデフレーションによって発生した」と指摘している。
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