三種の分類階層
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/12 03:22 UTC 版)
空間の分類は三つの階層で行われる。各数学理論がその対象が持つある種の性質によって対象が記述されるものとして与えられるとき、最初に問題となるのは「それはどのような性質か」ということである。 例えば、第一階層の分類 (upper-level classification) でユークリッド空間と射影空間とが区別できる。これはユークリッド空間では二点間の距離を考えることができるが、射影空間では考えることができないことによる。これらの空間は「型」が異なる。 別な例として、「三角形の内角の和はいくらか」という問いはユークリッド空間では意味を持つが射影空間では意味を持たない。故にこれらは型の異なる空間なのである。一方、この問いは非ユークリッド幾何学でも意味を成すが、答えが異なる。これは第一階層での区別ではない。 ユークリッド平面と三次元ユークリッド空間との区別も、「次元はいくつか」という問いは双方で有効であるから、やはり第一階層での区別ではない。 ブルバキによれば、第一階層の分類は「型による特徴づけ」あるいは「型付け」と関係があるが、それらは同一の概念ではない(二つの同値な構造が異なる型を持ちうる)。 第二階層の分類 (second level of classification) では(第一階層に準じて意味を成す問いの中で)特に重要な問いに関してその答えを勘案するものである。この第二階層で区別されるものは例えば、ユークリッド空間と非ユークリッド空間、有限次元空間と無限次元空間、コンパクト空間と非コンパクト空間などがある。 ブルバキによれば、第二階層の分類は「種」の分類である。生物学的な分類法とは異なり、一つの空間は複数の種に属しうる。 第三階層の分類 (third level of classification) は、大まかに言えば(第一階層に準じて意味を成す)問いとして「可能な全て」についての答えを勘案するものである。例えばこの階層で、次元が異なる空間はどれも互いに区別することができるが、二次元ユークリッド平面として扱われる三次元ユークリッド空間内の平面と、やはり二次元ユークリッド平面として扱われる実数の対全体の成す集合とはこの階層で区別することはできない。同様に、同じ非ユークリッド空間の異なるユークリッド模型もこの階層で区別することはできない。 より厳密に言えば、第三階層の分類は同型を除く分類である。二つの空間の間の同型とは、一方の空間の点と他方の空間の点との間の一対一対応であって、「型付け」を与えることによって決まる点の間の関係を保存するものとして定義される。互いに同型な空間は一つの空間の複製であると考えられ、その一つがある種に属するならばそれら全てがその種に属する。 同型の概念は第一階層の分類を浮き彫りにする。同じ型の二つの空間の間に一対一対応が与えられれば、それが同型か否かを問題にすることができる。これは型が異なる空間に対しては意味を成さない問いである。 自分自身への同型は自己同型と呼ばれる。ユークリッド空間の自己同型は、ユークリッドの運動と鏡映である。ユークリッド空間は、任意の点を適当な自己同型によって別な任意の点に写せるという意味で等質である。
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