三相交流
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/03 01:44 UTC 版)

三相交流(さんそうこうりゅう、英語: three-phase electric power)とは、起電力(電圧)の位相を120度(
瞬時値形式で書いた場合は次の通り[6]。
-
三相交流電流のベクトル図 瞬時値形式で書いた場合は次の通り。
-
これらの接続方式を順に、Y-Δ接続・Y-Y接続・Δ-Y接続・Δ-Δ接続と呼ぶ[11]。
三相平衡回路の性質
中性線の省略


図のように電源と負荷を接続した場合を考える。(この接続方式をY-Y接続[12] という)電源は対称三相交流、負荷は同じインピーダンス(平衡負荷)[5] とする。
このとき中性線に流れる電流は0になり、中性点間の導線を取り除くことができる[12]。
導出
上記回路(中性点を省略していない方)に重ねの理を適用する。電源が


すると次のような回路となるから、負荷インピーダンスを
Y結線(ワイけっせん, ほしがたけっせん, スターけっせん)は、三相各相をその一端の中性点で接続する結線[15]。星形結線(ほしがたけっせん)、スター結線とも表記する[16]。
各相間の電位差を線間電圧(せんかんでんあつ)といい、各相と大地間の電位差を相電圧(そうでんあつ)という。また、結線外の各相の電流を線電流(せんでんりゅう)といい、結線内の各相の電流を相電流(そうでんりゅう)という。
Y結線における、線間電圧と相電圧の関係は次の通り。
- 線間電圧の大きさは、相電圧の大きさの
三相交流におけるΔ結線図 Δ結線(デルタけっせん, さんかくけっせん)は、三相各相を相電圧が加わる向きに接続し閉回路とする結線。三角結線(さんかくけっせん)、デルタ結線とも表記する[16]。
Δ結線における、線電流と相電流の関係は次の通り。
- 線電流の大きさは、相電流の大きさの
三相交流におけるV結線図 V結線(ブイけっせん)は、Δ結線より三相のうち一相を除いた結線である。
Δ結線との関係
取り除かれた電源の端子間には、Δ結線のときと同じ電圧が発生する[20]。したがって、V結線であってもΔ結線と同じように三相交流は供給される。
ただし有効電力の値はΔ結線の
三相交流の波形 相順 電源記号 変圧器端子 入力 出力 第一相 R U u 第二相 S V v 第三相 T W w 第四相 N O o - A相、B相、C相という表記もある[3]
- 三相4線式の場合、第四相は中性相、中相ともいう。
動力と電灯の使用例
本来電灯は蛍光灯や白熱灯といった照明器具という意味[28]で、動力は機械を動かす力という意味で使用される[29]。
だが、本来の意味とは異なる意味でこれらの語句が使用されることがある。ここではその例を見ていく。
配電線
電柱に設置されている配電線のうち、三相交流を三相三線式200Vで送電している配電線を低圧動力線と呼ぶ。
一方、単相交流を単相三線式100V/200Vで送電している配電線を低圧電灯線と呼ぶ[30]。
動力と電源
蛍光灯や白熱灯といった照明器具および単相100V・単相200Vで使用する電気機器以外の電気機器を動力という。
三相電源で使用されるエアコンやエレベータなどが動力にあたる[31]。
また、三相電源のことを動力電源という[32]。
料金プラン
電力会社の料金プランに電灯・動力の語句が使われることがある。
例えば北海道電力には従量電灯という料金プランが存在する。プランの適用対象は「照明器具および単相交流で動作する電気機器を使用する場合」となっている[33]。
また東京電力には動力プランという料金プランが存在する。プランの適用対象は三相交流を使用する電気機器(例:大型エアコン)を使用する場合となっている[34]。
動力(三相電源)への単相負荷接続
JIS C4526-1 3.4.9全極遮断[35]には、機器用スイッチは「単相交流機器及び直流機器にあっては,一つのスイッチ作用で実質的に同時に両方の電源電線を遮断すること,又は3以上の電源電線に接続された機器にあっては,接地された導体を除き1回のスイッチ作用で実質的に同時に全ての電源電線を遮断すること」と規定されている。従って、片切スイッチ及びスイッチング回路を使用した単相機器を、三相電源のR-Tに接続して使用することは技術基準に違反する。また電力会社との約款に違反するケースもある。
送電方式
具体的な送電方式として、以下のような方法がある。
脚注
注釈
出典
- ^ “5-2. 三相交流とは(電気の種類)”. 東京電力グループ. 2021年7月4日閲覧。動画の1分01秒から1分08秒に、三相交流の説明がある。
- ^ a b c 山本充義, 山口貢「三相交流ができるまで」『電気学会誌』第120巻第8-9号、電気学会、2000年、522-525頁、doi:10.1541/ieejjournal.120.522、2022年5月17日閲覧。
- ^ a b c “三相交流とは|架空送電線(がくうそうでんせん)の話|produced by 株式会社タワーライン・ソリューション”. www.k-tls.co.jp. 2023年8月5日閲覧。
- ^ a b c d 『近代電気工学大講座12 近代送電工学1』p.28
- ^ a b c 『例題で学ぶやさしい電気回路[交流編]』 p.160
- ^ 『工専学生のための電気基礎』p.111
- ^ a b 『工専学生のための電気基礎』p.112
- ^ a b c 『例題で学ぶやさしい電気回路[交流編]』 p.162
- ^ a b 『工専学生のための電気基礎』p.119
- ^ a b “対称座標法とはどんな計算か”. 間邊 幸三郎. 2021年7月17日閲覧。
- ^ a b c 『例題で学ぶやさしい電気回路[交流編]』 p.161
- ^ a b 堀 浩雄『例題で学ぶやさしい電気回路[交流編]』 p.163
- ^ a b “電力回路第8回目 多相交流回路の基礎”. 2021年7月17日閲覧。
- ^ 『工専学生のための電気基礎』pp.114-119
- ^ TAKE「三相交流回路の基礎」『電気主任技術者試験に挑戦』 2009年
- ^ a b 佐藤智典「Y 結線 / Δ 結線」『電気製品の EMC/安全適合性 ―― 用語解説』 2008年4月27日
- ^ 『例題で学ぶやさしい電気回路[交流編]』 p.164
- ^ 『例題で学ぶやさしい電気回路[交流編]』 p.166
- ^ 『工専学生のための電気基礎』p.127
- ^ a b “通信講習用船舶電気装備技術講座(電気理論編・初級)”. 日本船舶電装協会. 2021年7月17日閲覧。
- ^ “通信講習用船舶電気装備技術講座(電気理論編・初級)”. 日本船舶電装協会. 2021年7月28日閲覧。
- ^ 『工専学生のための電気基礎』pp.117-118
- ^ 『例題で学ぶやさしい電気回路[交流編]』 p.171
- ^ 『例題で学ぶやさしい電気回路[交流編]』 p.172
- ^ 「三相交流とは」『百科事典マイペディア』 コトバンク、2010年5月
- ^ 『近代電気工学大講座12 近代送電工学1』p.26
- ^ a b 『近代電気工学大講座12 近代送電工学1』p.27
- ^ 『新明解国語辞典 第七版』p.1049
- ^ 『新明解国語辞典 第七版』p.1071
- ^ “電気の流れ(配電線)”. JEIC(電磁界情報センター). 2021年7月17日閲覧。
- ^ “用語解説”. 中部電力. 2021年7月17日閲覧。
- ^ “電圧の種類・単相電源と動力電源とは”. 2021年7月17日閲覧。
- ^ “従量電灯”. 北海道電力. 2021年7月17日閲覧。
- ^ “動力プラン”. 東京電力. 2021年7月17日閲覧。
- ^ https://kikakurui.com/c4/C4526-1-2013-01.html
参考文献
- 堀 浩雄『例題で学ぶやさしい電気回路[交流編]』 森北出版、2015年 ISBN 9784627735422
- 埴野一郎 田村康男『近代電気工学大講座12 近代送電工学1』 電気書院、1969年
- 稲垣米一 大川善邦 若山伊三郎『工専学生のための電気基礎』 コロナ社、1984年
- 山田忠雄 柴田武『新明解国語辞典 第七版』 三省堂、2018年 ISBN 9784385131078
- “5-2. 三相交流とは(電気の種類)”. 東京電力グループ. 2021年7月4日閲覧。
- “用語解説”. 中部電力. 2021年7月17日閲覧。
- “電気の流れ(配電線)”. JEIC(電磁界情報センター). 2021年7月17日閲覧。
- “従量電灯”. 北海道電力. 2021年7月17日閲覧。
- “電圧の種類・単相電源と動力電源とは”. 2021年7月17日閲覧。
- “動力プラン”. 東京電力. 2021年7月17日閲覧。
- “動力プラン約款”. 東京電力. 2021年7月17日閲覧。
- “通信講習用船舶電気装備技術講座(電気理論編・初級)”. 日本船舶電装協会. 2021年7月17日閲覧。
- “対称座標法とはどんな計算か”. 間邊 幸三郎. 2021年7月17日閲覧。
- “電力回路第8回目 多相交流回路の基礎”. 2021年7月17日閲覧。
関連項目
- 線電流の大きさは、相電流の大きさの
- 三相交流回路のページへのリンク