ラクトースオペロンの構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 23:09 UTC 版)
「ラクトースオペロン」の記事における「ラクトースオペロンの構造」の解説
オペロンには、タンパク質をコードした構造遺伝子 structural gene およびそれらの発現を制御する 調節遺伝子 regulator gene があるが、このページではその例の一つを解説する。ラクトースオペロンはlacZYAともいわれるが、これはラクトースオペロンがラクトース代謝系の3つの構造遺伝子lacZ、lacY、lacAから構成されているためである。 lacZ:β-ガラクトシダーゼ beta-galactosidase (EC 3.2.1.23, 反応)(LacZ)をコードする遺伝子である。β-ガラクトシダーゼの活性型は約500 kDaの四量体の酵素である。この酵素は二単糖のβ-ガラクトシドを単糖に分解する。たとえば、ラクトースはグルコースとガラクトースに分解される。詳細は「LacZ」を参照 lacY:β-ガラクトシドパーミアーゼ galactoside permease (LacY)をコードする遺伝子である。β-ガラクトシドパーミアーゼは30 kDaの膜結合性タンパク質で、膜輸送系を構成する。β-ガラクトシドを細胞内に取り込む。 lacA:ガラクトシドアセチルトランスフェラーゼ galactoside transacetylase (トランスアセチラーゼとも)(EC 2.3.1.18, 反応)(LacA)をコードする遺伝子である。ガラクトシドアセチルトランスフェラーゼはアセチルCoAからβ-ガラクトシドの6位の炭素にアセチル基を転移させる酵素である。ラクトース代謝における役割ははっきりしていないが、β-ガラクトシドパーミアーゼの運搬に紛れ込む別の物質を無毒化するらしい。通常の遺伝子の開始コドンはAUGであるが、lacAの開始コドンはUUGである。ただし、通常の原核生物の開始コドンと同様にN-ホルミルメチオニン残基を指定している。 この3つの遺伝子はひとかたまりの転写単位であるオペロンとして丸ごと転写されるポリシストロニック・オペロンを形成しており、一つの伝令RNA(mRNA)中に3つの遺伝子に由来する配列を含む。一本のmRNA中のコーディング領域はそれぞれシストロン cistron と呼ばれ、ラクトースオペロン中のシストロンは(ほかのオペロン同様に)、別々に翻訳される。 一方、転写頻度を決定する調節遺伝子はlacP(プロモーター配列)、lacO(オペレーター配列)とプロモータ上流に存在するCAP結合部位の三つである。一般に、オペロンの制御様式は2つに分けられる。転写されないようにする負の制御と転写を促進する正の制御で、関与するタンパク質もそれぞれリプレッサーとアクチベーターと異なっている。ラクトースオペロンのリプレッサーはlac リプレッサー(LacI)でlacIにコードされており、オペレーター配列に結合する。転写を始めるRNAポリメラーゼはプロモーターに結合する必要があり、lac リプレッサーはこれを妨害することで負の制御をおこなっている。一方、アクチベーターはCAP-cAMP複合体であり、プロモーター上流のCAP結合部位に結合することにより、RNAポリメラーゼのプロモーターへの結合を促進する。なお、通常の遺伝子の開始コドンはAUGであるが、lacIの開始コドンはGUGである。 図2. 左のPromoter:lacI のプロモーター、lacI :lac リプレッサーの遺伝子、左のTerminator:lacI のターミネーター(転写を終了させる配列)、右のPromoter:ラクトースオペロンのプロモーター、Operator:ラクトースオペロンのオペレーター、lacZ、lacY、lacA、右のTerminator:ラクトースオペロンのターミネーター 大腸菌の主な炭素源はグルコースである。しかし、グルコースが欠乏する場合は、普段代謝しないラクトースを利用する。そんな事態の対処としてlacオペロンを転写・翻訳させるための負と正の制御系が存在する。
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